アトラシアン、AIが社内に埋もれた知識を統合・提示し、チームの新たな行動を支援する「Atlassian Rovo」発表

AI要約

アトラシアン株式会社がAIによる企業内ナレッジ活用の新機能「Atlassian Rovo」について記者説明会を実施。

AtlassianはAIを活用し社内情報の横断的学習を支援するRovoを発表。

Rovoには検索機能やナレッジカード、対話形式のAIエージェントなどが提供される。

アトラシアン、AIが社内に埋もれた知識を統合・提示し、チームの新たな行動を支援する「Atlassian Rovo」発表

 アトラシアン株式会社は6月7日、米Atlassianが5月に発表した、企業内の各種ナレッジをAIによって活用する新機能「Atlassian Rovo」について記者説明会を実施した。

 Atlassianは、プロジェクト管理ツール「Jira」や、ナレッジ共有ツール「Confluence」、タスク管理の「Trello」など、チーム作業を支援するソフトウェアを開発している。Rovoは、AIによって、さまざまな社内ツールに分散している情報について、従業員が見つけて行動につなげることを支援するサービスだ。2023年4月に発表されたAI機能「Atlassian Intelligence」を活用して作られているという。

 Rovoは、Atlassian製品やGoogleドライブ、SharePoint、あるいは組織内の専用アプリケーション上にある情報を横断的に学習するのが特徴となっている。それにより、ユーザーの状況に応じた結果を返す検索機能「Revoサーチ」や、Atlassian製品上の組織独自の用語やプロジェクト名などからその要約情報がわかる「Rovo定義」、対話形式で質問できる「Rovoチャット」、仮想のチームメイト「Rovoエージェント」などの機能を提供する。

 記者説明会では、Atlassianのジョシュ・デヴェニー(Josh Devenny)氏(AI, Agile & DevOps 製品統括)が登壇し、解説を行った。

■ 企業内データがツールごとにサイロ化しているのをAIでゲームチェンジ

 まずデヴェニー氏は背景として、いま企業はオンプレミスからクラウドまでの多くのツールに依存して、ツールごとにデータがサイロ化していると指摘。しかし、生成AIという魔法のツールを手にしたことにより「Atlassianはゲームチェンジの機会を提供する」と語った。

 Atlassianは生成AIを使った機能として、2023年に「Atlassian Intelligence」をローンチした。12月のGA(一般提供開始)以来、すでに3万ユーザー以上が利用し、MAU(月間アクティブユーザー数)は3倍になっているという。先月にも30以上の新しい機能をリリースし、80%がAIの検索機能で時間を削減、週平均45分の削減を実現しているとデヴェニー氏は語った。

 それに続く新しい製品が、今回の「Atlassian Rovo」だ。デヴェニー氏によると「組織全体の新しい知識の発見と行動に革命を起こすように作られた」という。

 Rovoは、チームの知識について「見つける」「理解する」「行動する」の3要素のループにおいて、それぞれに力をもたらすものだと氏は語った。

■ 社内データを文脈に即して横断検索

 「見つける」ためのRovoの機能の一つが、「Rovoサーチ」だ。たとえばJiraやSharePoint、Googleドライブなど、さまざまなアプリケーションにあるデータの中から、チームが何を探しているかという文脈に即した結果を返す検索機能となっている。たとえば、プロジェクトが軌道にのっているかどうかをRovoに尋ねると、JiraやSharePointにある情報から検索して答える、とデヴェニー氏は説明した。

 また、カスタムサーチコネクタによって、独自データを検索ソースとして追加でき、組織独自のアプリケーションのコンテンツを検索できるようになる。

 デヴェニー氏によると、Atlassian自身でも内部開発ドキュメントを検索できるようにして、新しいドキュメントを検索する時間を週に1~2時間削減したという。

■ プロジェクトや用語などの情報を社内データからナレッジカードに要約

 「理解する」としては、「Rovo定義」がある。これは、たとえば新入社員が、社内特有の略語や社内プロジェクトなどについてわからないのを助けるものだとデヴェニー氏は説明した。

 たとえばBlueberryという名前のプロジェクトがあるとする。ここで新入社員にJiraで、Blueberryプロジェクト関連のイシューのチケットがアサインされたときに、Blueberryプロジェクトがわからないことがある。

 このとき、イシューのテキスト中の「Blueberry」という言葉にリンクが付き、クリックすると社内の情報の要約が「ナレッジカード」として表示されるということだ。情報源としては、たとえばConfluenceに書かれたプロジェクト概要や、Jiraのプロジェクト状況、SharePointに入ったWordの提案文書、営業チームがGoogleスプレッドシートに書いた顧客リストなどに対応する。

 また「Rovoチャット」は、対話形式のAIだ。質問したり、ブレインストーミングの相手になってもらったりできる。また、Atlassianのツールから起動したときには、その文脈も理解して答えるようになっているという。

■ 20種類のエージェントを標準で用意

 「行動する」としては、「Rovoエージェント」がある。これは、人間のチームメイトと協力してさまざまな作業を実施する機能だ。

 具体的には、デモを見るかぎりでは、Jiraのバックログの整理や、コンテンツの書式揃え、翻訳などの作業を、生成AIへのプロンプトとして用意しておくもののようだ。

 エージェントは、標準で20種類が含まれるほか、自分で作ることもでき、Marketplaceで入手することもできる。

 デモでは、標準で含まれる「Commscrafter」という機能が紹介された。Confluenceなどに書かれた文章を選択して、Commscrafterを呼び出す。そしてメニューから「Check brand consistency」を選ぶと、その文章をレビューして、会社のブランド方針に一致しているかどうかをチェックしてくれる。このブランド方針は、事前に会社のコーポレートマーケティン部門がConfluence上に用意した内容を学習したものだ。

 ちなみに、Atlassian社内ではすでに4カ月で300のエージェントを作ったとのことだった。

 最後にデヴェニー氏は、「AIがチームの生産性を上げるのはまだ黎明期だと信じている。これからも続々と新しいAIの機能を出していくのを楽しみにしている」と語った。