シンギュラリティは2045年より前に?NRI・Google Cloud語る生成AI

AI要約

1950年代から始まる人工知能の発展は、2020年代に第4次ブームを迎えている。生成AIが注目される中、日本企業における導入状況や導入効果についても言及された。

生成AIの導入により、非構造化データの活用や業務の自動化、効率化が実現されている。実際の企業事例も紹介され、生成AIがビジネスに与える影響が明らかにされた。

また、生成AIの早期導入が極めて重要であり、他社に遅れを取ることができない状況であることが強調された。さらに、AIの進化によるシンギュラリティの可能性も議論されている。

シンギュラリティは2045年より前に?NRI・Google Cloud語る生成AI

 生成AIの活用が急速に進み、身近なテキスト、画像、音楽などの生成からビジネスプロセスの革新まで、幅広い分野で利用されている。具体的に生成AIは企業において、どのように活用されているのだろうか。その活用事例と今後の展望について、NRI AIコンサルティング部 シニアコンサルタント 橘 優太朗氏、NRIデジタル エキスパートデータサイエンティスト 松崎 陽子氏、Google Cloud AI事業本部 執行役 事業本部長 橋口 剛氏が語った。

本記事は2024年4月24日-26日に開催された「Japan IT Week 春」の講演内容をもとに再構成したものです

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 1950年代から始まる人工知能の発展は、2020年代に入り第4次ブームを迎えている。

 それぞれの年代を振り返ると、1950年以降の第1次ブームでは、人工知能が登場。人間が決めたルールに従い、人間と同様のタスクを遂行した。1980年以降の第2次ブームでは、人が定義した特徴から機械が結果を判別・予測する機械学習、2010年以降の第3次ブームでは、機械が特徴を定義し判別・予測する深層学習が登場した。

「2020年以降の第4次ブームでは、機械が独自のアウトプットを生成する生成AIが台頭しています。生成AIは汎用(はんよう)性が極めて高いため、市場からの支持率・期待値が高いです」(橘氏)

 日本企業における生成AIの導入状況は、特に大企業を中心に活用が進んでおり、大企業における導入率は25%に達している。将来的な導入割合は、RPAと同等レベルとなる見込みだという。

 生成AIを利用することで、非構造化データの有効活用や業務の自動化、効率化が見込まれる。社内データの大半は画像・文章等の非構造化データであり、活用価値は極めて大きい。

 また、平均で現状業務の25%が自動化・効率化の対象となる。生成AI活用のインパクトが特に大きい業種はソフトウエアエンジニア、マーケティング、営業の3種。実際、企業が生成AIを活用することで、生産性は平均40%向上するというデータもある。

 実際の企業の導入事例は以下のとおりさまざまだ。

・モルガンスタンレー:GPT-4を活用したファイナンシャルアドバイザー向けQAチャットボットの開発。

・大和証券:音声データから要約を生成するAI「Speech2Summary」の開発。

・メルセデス・ベンツ:GitHub Copilotを導入し、ソフトウェア開発の品質向上。

・伊藤園:「お~いお茶 カテキン緑茶」のパッケージリニューアルデザインに生成AIを活用。

・Toyota Research Institute:工学的制約を考慮した車両デザインツールの開発。

・NRI:1万人アンケートの集計・分析・示唆抽出ツールの開発。

 今後1~2年で業務に生成AIが自然に溶け込んでいないと他社に劣後するという。この波に乗り遅れてはいけないだろう。

 生成AIモデルの1つであるClaude3がIQテストで人間の平均値であるスコア100を超えたという報告もあり、いわゆる"シンギュラリティ"の到来がこれまで想定されていた2045年より大幅に早く訪れる可能性がある点も注意だ。