「長い間、売れなかった」…松本まりか「役者として生きて」″シンデレラストーリー″じゃない24年

AI要約

松本まりかが長い間売れなかった過去を振り返り、下積み時代について語る

売れても幸せを感じず、自身の演技の大義を模索していた松本が新たな境地にたどり着く

主演ドラマ『ミス・ターゲット』の現場で幸せを感じ、演技に自信を持つようになる松本まりか

「長い間、売れなかった」…松本まりか「役者として生きて」″シンデレラストーリー″じゃない24年

「長い間、売れなかったのは事実です。ただ、あの日々が『下積み』だったとは思っていません」

4月期ドラマ『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で、本気の婚活に臨む結婚詐欺師の朝倉すみれ役で主演を務めている松本まりか(39)。意外にも本作がデビュー以来、初のGP帯(午後7~11時)連続ドラマ主演となる。

「デビュー作の反響がよかったんです。そこで『絶対売れるよ』と周囲にチヤホヤされ、期待してしまった。でも後は下降する一方。長い間、デビュー作を超える作品を生み出せずにいました」

松本のドラマ初出演は15歳のとき。『六番目の小夜子』(NHK・’00年)で演じた学級委員長役が評判となり、滑り出しは好調に見えた。だが、その後は同年代の役者が国民的な俳優へと成長していくのを横目に、オーディションを受けては落ちる日々を送っていた。

「私の輝けなかった20~30代を一言で表すなら、″究極に退屈な時間″でしょうか……。自分の存在意義は何なのかと、ずっともどかしさを感じていました。あの期間を『下積み時代』と言われることもありますが、違和感があります。まるで私だけがチャンスに恵まれず、大変な思いをしていたかのように聞こえるからです。俳優として成功した友人たちの努力と苦悩を、私は間近で見ていました。

自分の未熟さを不甲斐なく感じていた。そんな自分が簡単に売れてもきっとうまくいかない、しっかり実力がついてから売れるようになりたい――そう思って、輝けなかったあの期間は自分を磨き続けてきただけ。だから、自分が特別に苦労していたみたいな、けっしてそんな”シンデレラストーリー”ではありません」

もがき苦しんだ無名時代を、今ではポジティブに捉えている。

「順風満帆の人生だったらけっして知ることのできない人の弱さや痛みを、他者からも自分からも認められなかったあの時代に思い切り味わうことができた。役者としてのテクニックでは演じることのできない痛みを、身をもって知ったからこそできる演技がありました」

◆ネガティブはやり切った

転機が訪れたのは’18年。ドラマ『ホリデイラブ』(テレ朝系)での「あざとかわいい」キャラから「怖い」キャラへと変わっていく不倫相手役で一気に知名度が上昇。ドラマや映画の出演が激増し、生活は一変した。それでも、松本の心から、わだかまりが消えることはなかった。

「ようやく注目してもらえるようになったのに、何をしてもどこか心が空虚で、幸せを感じられなかった。売れたらゴールだとは思ってなかったんですが、『何のために演技をするのか』という大義が自分にはない、と売れて初めて気づきました。’18年から今日までの6年間は、その答えを探すため、何かを掴もうと必死でした」

これまで松本の演技の源泉にあったのは、ハングリー精神だった。だが、今年に入ってからは、そこにも変化が生まれつつあるという。

「例えば『なにクソ!』というネガティブな感情はエネルギーこそ凄いけど、ずっと維持し続けるのはキツいし、もう、やり切りました。今は、幸せや愛の感情をベースに演技と向き合っています。表面上の演技では視聴者を感動させることができないし、自分も納得できない。芝居だと忘れるくらい役になりきって、湧き上がった感情をぶつけるには、自分自身が心から幸せを感じる必要があります」

『ホリデイラブ』で注目されてからずっと感じられなかった「幸せ」を、主演ドラマ『ミス・ターゲット』の現場で感じられたという。

「主演として大きな責任を背負(せお)ったことで、 大きな幸せを得られたんです。現場スタッフや共演者を自分が信頼して、信頼もされる。その関係がこんなにも自分を幸せにしてくれるんだと初めて知りました。そこに行けば嫌なことがすべて忘れられるというくらい素敵な現場です。おかげで今、自然に『幸せ』の演技ができています。心が躍ってる状態で臨んだこの作品は、自信を持っておすすめできます」

まもなく芸歴25年を迎える松本は、自らの「演技をする大義」という問いに、今では明確な答えを持っている。

「観た人を幸せにし、ポジティブな感情を与えること。これが、私の演技をする意義なのかな」

長い間、自分自身と向き合うなかで開いた新境地。女優・松本まりかの進化はここからさらに加速する。

『FRIDAY』2024年5月31日号より