朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」

AI要約

土居志央梨は、朝ドラ『虎に翼』で男装の女性役を演じる若手女優であり、独自の個性を持つ

彼女は学生時代から役者としての信念を持ち、脚本に書かれた役を独自の解釈で演じるセンスが称賛されている

土居は過激な演技にも臆することなく取り組み、今後の活躍が期待されている

朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」

 朝ドラは若手俳優にとっては全国区になるための“登竜門”でもある。個性豊かな『虎に翼』の登場人物のなかでも異彩を放つのが、主人公・寅子とともに弁護士を目指す男装の女性、山田よね役の女優・土居志央梨(31)だ。

「グジグジしたところがなくて振り切れた女優ですよ。とにかく脚本に書いてあることの解釈のセンスがいい。彼女は学生の頃から“役者はこうあらねばならぬ”という古き良き信念のようなものを持っていたね」

 そう語るのは、土居の恩師である映画監督の高橋伴明氏(75)。土居は高校卒業後、役者を志して京都造形芸術大学の映画学科に進学。在学中の4年時にオーディションを経て、同大の教授でもあった高橋氏が監督する映画『赤い玉、』に出演した。

 今回のよね役は姉が身売りされ、自身も親に売られそうになった過去があるために「女を捨てる」役柄。一方、『赤い玉、』では主演の奥田瑛二演じる大学教授を誘惑する学生を演じ、肌の露出を厭わぬ大胆な濡れ場シーンを披露している。映画評論家の塩田時敏氏が言う。

「奥田瑛二さん相手に臆することなく“愛人にしてください”と言い放ち、濡れ場のシーンでは髪を振り乱しながら一心不乱に挑んでいました。まだ学生なのにカメラの前であそこまで自分を曝け出せる女優はなかなかいませんよ。

 奥田さんも舞台挨拶でこのシーンを振り返って、『“あぁ、愛人になれよ”と言いたくなるくらいドキッとした』と語っていましたから」

 撮影現場では、高橋氏との間にこんなやり取りがあったという。

「奥田が演じた主人公・時田は『映画監督で大学教授』という役柄で、まさに俺と同じ境遇の役柄だった。土居がその時田に向かって『大学で先生やってるなんて、映画監督としてもう賞味期限切れだよね』と言い放つ台詞があった。

 彼女は本番前に俺の前で面と向かって、その台詞を言ってきたんですよ。俺も思わず『おお、殴りたくなるね』なんて返したんだけどさ(笑)。臆することもなく、堂々としたもんですよ」(高橋氏)

 体当たりの演技で注目を集めた土居はその後、数多くの作品に出演するようになる。朝ドラ出演は『虎に翼』が初めてだが、強い意思を持つよねの役柄は土居にとって「ハマリ役だろう」と高橋氏は言う。

「土居は濡れ場に対しても『いい作品にするためには顔を映すも身体を映すも一緒でしょ』という潔い覚悟を持っていた。その覚悟が、今回の男装の役にも見える。彼女は生涯、女優でしょうね。長く続けてほしいです」

 よねは今後も物語のキーパーソンになりそうであり、土居の演技が益々愉しみである。

※週刊ポスト2024年5月31日号