俳優・渡辺大「親の存在は関係ないんだな、と」落ち続けたオーディションの苦い思い出とドラマ『WATER BOYS』共演者から受けた影響

AI要約

俳優の渡辺大が40歳になった現在の活動や家族について語る。

芸名や俳優業の苦労、親である渡辺謙との関係について語る。

オーディションでの厳しい経験や自身のキャリアについて振り返る。

俳優・渡辺大「親の存在は関係ないんだな、と」落ち続けたオーディションの苦い思い出とドラマ『WATER BOYS』共演者から受けた影響

 バランスのよい長身から圧倒的なオーラを放つ、俳優の渡辺大。40歳になったばかりの現在、ドラマ、映画のほか舞台にも活動の幅を広げている。精力的に活躍する俳優としての顔のほか、俳優の渡辺謙、モデル、女優として活躍する杏を家族に持つという一面でも知られている。そんな渡辺さんのTHE CHANGEとは。【第1回/全5回】

「早く着いてしまって、すみません!」

 取材場所である会議室に入って来た瞬間、そのオーラに圧倒されてしまった。ドアの上枠に頭頂部がいまにもつきそうなほどの長身に、吸い込まれそうな目元、そして、よく通る声。画面越しではない俳優の渡辺大さんを目の当たりにし、編集者もカメラマンも、その迫力に思わず恐縮する。

 そんなこちら側の緊張感を知ってか知らずか、渡辺さんはよく通る声で「事前にいただいた質問項目に“声優さんへの熱い想いをお聞かせください”と書いてありましたよね」と、くだけた表情で話す。

「アニメはすごく観ますが、そんなに公言していないのに、僕のウィキペディアに“声優の横山智佐さんと対面したときは感激した”と書いてあって。横山さんにお会いしたことはブログにちょっと書いただけなのに、どなたかが拾ってくださったんですね」

 9月6日に最終回を迎えたヒューマン政治サスペンス『笑うマトリョーシカ』(TBS系)では、一見爽やかでありつつも意味ありげな鋭い視線がなんとも緊張感を漂わせる、櫻井翔演じる政治家の同級生で後援会長を演じた。

「この役、“この人、なんかやろうとしている……!”という雰囲気でしたよね(笑)」

 秋には舞台『罠』の公演や映画『六人の嘘つきな大学生』の公開が控えるほか、ここ3,4年の出演作は15本を越えるなど多忙な日々を送るが、俳優業をスタートさせたころは「オーディションでコテンパンにされて帰された記憶が多い」と話す。

ーー本名ではなく、芸名で活動していた時期がありますが、そのころですか?

「そうですね」

ーーお父さまは俳優の渡辺謙さんですが、お父さまの存在を隠すために芸名を使用していたのでしょうか。

「当時の事務所としても、そういう意図はあったと思います。名前からはわからないようにしたほうがいいんじゃないか、と。よくも悪くも、“渡辺謙の息子”として認識されてしまうと、ちゃんと見てもらえなくなることがあるんじゃないか、という懸念があったので、それなら違う名前でやるのもおもしろいじゃないか、ということでした」

ーー自らご希望を?

「いや、うちの父にもそういう話があって、決まりました」

 使えるものは使う、という二世俳優も多くいるかもしれないが、渡辺さんとその周囲の大人たちはそうしなかった。

「でもまあ、あとあとわかってしまうんですけどね。そういう意味では、比較的オーディションの途中まではいけるんですが、なかなか“そこから先”へは行けないから、親の存在は関係ないんだな、というのはしょっちゅう思いましたね」

 オーディションでは冷静な言葉を投げかけられた。

「それ、台本を読んでいるだけだよね?」

「何をもってして、そのセリフを言っているの?」

「謙さんだったら、こんなふうには言わないよね」

「名前を変えたところで知っている人は知っていたし、それでも言う人もいたし、僕自身も”あれじゃあ受からないよな”と納得しながらやっていました」