ツートライブ(2)何よりも欲しいのは「漫才やっていくうえでの免許証」すごい漫才師へ「冠がほしい」
ツートライブはM-1グランプリでの結果にこだわらず、独自の漫才スタイルを確立する手応えを感じている。
NSC時代から苦労し、漫才の違和感を感じていたが、ネタ合わせをやめることで新しい漫才スタイルを模索するようになった。
ツートライブは今後、真の漫才師としての道を模索し、漫才の本質を追及していく意欲を持っている。
M-1グランプリでこそ結果は出せなかったが、賞レースの呪縛から解かれ、現在は“自分たちの漫才”を確立する手応えを感じているツートライブ。長く漫才を続けるためにも、いま一番ほしいモノとは?
【ツートライブ インタビュー(2)】
◆テレビの画面で見た自分たちの漫才に感じた圧倒的違和感◆
―NSCではかなり成績優秀だったんですね?
周平魂「今から考えるとNSCでは輝いていた気はしますね。これまで怒られてた言動が怒られへんし、ホメられるし。だからちょっと勘違いもしてましたね。授業中もダンスやボイストレーニングの授業もめちゃめちゃやってて、特にボイトレの先生は優しいし、ぼくのこと好きや、と思ってたんです。それが最後の授業でバチーン叩かれて、1年間黙ってたけどちゃんとやれえ!って言われて。うわ、怒ってたんやと思って(笑い)。それもおもろかった」
たかのり「空気はピリっとしたけどな。でもみんな芸人目指してるから、なんとなく笑いの空気が生まれて」
―では、前途洋々な感じで卒業された?
たかのり「そうなんですけど、オーディションを受け出して現実を見るというか。え?マジでウケへんやん、マジであかんやん、となって」
周平魂「NSCの時は相手が芸人なんですよ。今でゆうたら、袖に向けてやってる感じで。おもろいと思ってることを芸人やったらわかってもらえるけど、一般のお客さんには全然というか」
たかのり「けっこう苦しみました。でも、ようやく10年目でABCお笑い新人グランプリで決勝まで残ったんです」
周平魂「あれがなかったら、ほんまにヤバかった」
たかのり「でもね、その決勝の模様をテレビ画面で見たときに、おもろいと思ってることが伝えわってなかったんです。あれ?と思って。なんか、やりたいスタイルをやりきろうと思ってるだけで」
周平魂「こっちの思いと、画面を隔てた向こう側への伝わり方が違ってたんです」
たかのり「もう少し突っ込んで言うと、これを提示するからお客さん笑ってくださいよ、という感じなんですよね。お客さんを笑かすという感じではないんです」
周平魂「だから、ミスったりしても修正がきかない」
―それは打開できたのでしょうか?
たかのり「年齢いけばいくほど、フェイクのパフォーマンスとかフェイクなセリフとかはウケなくなるんです。だから、打開というよりは漫才の中の違和感をなくしていったという感じかもしれないですね」
周平魂「具体的に言うと、“これやりたいねん”みたいな漫才コントがまったく性に合わなくなってきた」
―ラフ次元さんも同じようなことをおっしゃってました、そういう「~やりたいねん」というのは全然入ってこないらしいです。
周平魂「へえ、そうなんですね」
たかのり「でもザ・パンチさんとかはスパーンと入ってくるんよね。アホをやりたい2人やから」
周平魂「あと、マヂカルラブリーさんとかね」
◆真の漫才師へ ネタ合わせ、やめてみた◆
―そういう意味では、これからはしゃべくりの精度を上げていくという感じなのでしょうか?
たかのり「試みとして、ネタ合わせをやめたんです。それは周平が意図的にやったんですが、ある日突然、相方が袖にいないんです。ぼくは“どこいったんや?きょう何のネタやるんやろ?”みたいになるじゃないですか。直前になっても来ないし、どうすんの?みたいになって。そしたら、出囃子鳴り始めてようやく来たんです」
周平魂「十何年もやってると、新しいことをやるにしても偶然を装って変えないとあかんと思って。その日は3ステも4ステもあったんですけど、全ステージで直前に姿を現したんです」
たかのり「ぼくはステージに立っても何のネタが来るのかわからん状態。でも、やってみたら、めっちゃウケたんです。まず、ぼくのリアクションがマジなんですね。こいつ何をやらかすねん、みたいな。導入のところでボケたらそれを処理するんですけど、それもこっちはどう来るかわからんから自然じゃないですか。そのとき、決め決めのネタはやっぱり苦手やったんやなあと思って」
周平魂「ぼくも実は出ていって何をするのか決めてないんです。しかも、あんまり覚えてへんネタをやってみたりして(笑い)」
たかのり「こっちは必死で何とかしようとする(笑い)」
周平魂「相方がびっくりしたような顔をさせたいだけなんですけど(笑い)、自分も頑張ってボケて。でも、ほんまにヤバかったな、ということにはならんかったですね。その空気感が伝わってんのか、客席はウケてました」
たかのり「何をしゃべるかわからんという張り詰めた空気感も良かったんでしょうね。本来はそれが漫才のあるべき姿だと思うし」
周平魂「最近、たかのりは急に来たら困るネタを、ぼくが言わんように布石打つんですよ(笑い)」
たかのり「きょう家族連れ多いらしいわ、とか。中学生の団体来てるらしいで、とかね(笑い)」
―でも、そういうことができるのもキャリアを積まれてきたからだとは思います。
たかのり「まあねえ、それは言えるかもしれないですね」
―M-1の経験とかも今の糧になっているという部分はあるんでしょうか?
周平魂「うーん、でもそれは美談にもならへん。やっぱりM-1で実績を上げたほうが良かったに決まってるから。ネタを作るのは実績があってもなくてもやってるやろうし。今はほぼ、名前も知られていないという状況なので」
たかのり「だからこそ“THE SECOND”にも出るんだと思います。ぼくら、これからずっと漫才やっていくうえでの免許証をまだもらってないんです。それがほしいですね」
周平魂「上方漫才大賞奨励賞と大賞は取れる可能性がある。それとセカンドもね。まだ、すごい漫才師になれる可能性は残ってるんです。そう考えたら冠はほしいですね」
―ツアーファイナルとなる大阪での単独ももまもなくです。
周平魂「ぼくら基本的には大阪の劇場に出てるので、ネタバレしてるものも多いから、ちょっと違う形でやるかもしれないんです。だから、普段から劇場に来てくれている人も楽しみにしてほしいですね」=終わり
【取材を終えて】ネタはおもしろいのに弾けきらない。ツートライブに限らず、芸人の中には少なからず存在する。なんでだろう?と不思議だったが、今回の取材で少しわかった。客席への伝え方も大切なのだろう。
コントや喜劇などの場合はまた違うのだろうが、漫才という形態の場合「どう?おもろい?」と強いるよりも「笑っていただけて幸いです」という空気感の方が客席を巻き込みやすい。ただ、M-1など賞レース全盛世代の芸人さんはどうしても前者になりがちなのかもしれない。
プロになる前からM-1での成功を目指していた2人。その呪縛が解けた今後が楽しみでならない。(江良 真)
◇漫才ブーム10年間ツアー(2024→2033)~1年目~青森公演 10月5日、県民福祉プラザ 県民ホール。三重公演 10月19日、四日市市民文化会館第2ホール。共演ミルクボーイ、金属バット、デルマパンゲ。
◇ツートライブ漫才ツアー「闊歩旅’24」IN大阪 10月26日、よしもと漫才劇場。公演問い合わせはFANYチケット06-6646-0365。