「スカイキャッスル」高評価 背景にのぞく本場韓国ドラマに込められた思い

AI要約

テレビ朝日系ドラマ「スカイキャッスル」が人気を集めている。セレブ妻たちのマウントバトルや主人公の複雑な心情が注目されている。

作品の背景には、養護施設出身の主人公やマウントバトル、謎の死など、韓国ドラマの要素が反映されている。

韓国ドラマではご近所付き合いが盛んであり、家庭や過去の問題が重要なストーリーラインに織り込まれている。

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

 放送中のテレビ朝日系ドラマ「スカイキャッスル」(木曜午後9時)が佳境を迎えている。

 セレブ妻たちのマウントバトルは、原作となった韓国ドラマから微妙にアレンジされてはいるが、日本のドラマではめったにお目にかかれないドロドロ具合がオリジナル版を反映し、それが視聴率健闘の一因になっているように思う。

 松下奈緒演じる主人公の紗英は児童養護施設の出身という設定で、それがこの人物の複雑な心中を象徴し、作品の芯にもなっている。韓国ドラマにはマウントバトルとこの養護施設がしばしば登場する。

 原作となった「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」が韓国で放送されたのは18年だが、その4年後に放送された「ハピネスバトル」も同様にマウントバトルと養護施設がキーワードになっていた。

 今年、WOWOWで放送されたこのドラマと「スカイ-」の共通点の多さに驚かされる。舞台は「スカイ-」の高級住宅地同様にセレブ感を意識したタワーマンション。過去を隠してセレブ妻となった義姉の突然死の謎を庶民派の妹が追うストーリーだ。「謎の死」から始まるミステリー仕立てはそのまま「スカイ-」に重なっている。

 どちらのドラマでも、マウントバトルの前提となる「ご近所付き合い」が盛んである。顔を合わせれば、軽く会釈する程度が都市部のスタンダードという認識があるが、韓国では「盛んなお付き合い」の方が当たり前なのだろうか。

 8年前の韓国紙に「ソウル市民の生活意識調査」という記事を見つけた。そこには「58%の人が近所の人にあいさつすらせずに過ごしている」とある。若者を中心に家は寝るだけの場所という認識が強まっているとも。都会のコミュニケーション不足は日本同様、いやそれ以上かもしれない。

 ひと昔前のもう少し濃かったご近所付き合いへの願望をくすぐりながら、多数派には縁のない、それなりの現実離れが、ドラマの題材としてちょうど良いということなのだろう。振り返れば、80年代にブームを起こしたTBS系「金曜日の妻たちへ」シリーズの魅力もそんなところにあったと思う。

 一方の養護施設に関しては、WOWOWで放送中の「ブラインド」では、信じられないような過酷な環境として描かれており、それが連続殺人事件の引き金にもなっている。同局でその前に放送された「昼と夜」に至っては子どもたちが人体実験の被験者にされるというすさまじい内容だった。

 現実の養護施設の環境とは懸け離れていると思うが、随所に製作者サイドの児童虐待への問題意識が垣間見える。これらの作品に限らず、韓国ドラマには登場人物が過酷な幼少期を送ってきたという設定が多い。こちらは、後を絶たない児童虐待のリアルな反映と言えるだろう。

 日本の児童養護の対象児童は約4万7000人。韓国の5倍を超え、人口が約2倍としても明らかに多い。このうち虐待を受けた子どもは53・4%に及ぶ(厚生労働省調べ)。連日のように報じられる児童虐待のニュースには何ともいえない気持ちになる。

 最近では、日本テレビ系「降り積もれ孤独な死よ」が印象に残ったが、設定がいくら現実離れしていても、その芯の部分でドラマが時代を映しているとするならば、韓国に比べて明らかにこの問題を題材にした作品は少ないように思う。【相原斎】