『VRChat』にハマると「Unity」に詳しくなるワケ “アバター改変”文化の楽しさと苦悩

AI要約

リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。

第41回は、グラフィックボードを『RTX4070Ti SUPER』に買い替えてウキウキな三沢がお届けします。

昨年の10月にひょんなことから『VRChat』を始めた筆者。年明け以降しばらくは足が遠のいていましたが、6月頃から再開し、フレンドさんとおしゃべりを楽しんだり、DJイベントに足を運んだりしつつ楽しんでいます。最近はストリーマー・スタンミさんの影響で新規ユーザーも増えているのでにぎやかで楽しいですね。

『VRChat』にハマると「Unity」に詳しくなるワケ “アバター改変”文化の楽しさと苦悩

 リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。

 第41回は、グラフィックボードを『RTX4070Ti SUPER』に買い替えてウキウキな三沢がお届けします。

 昨年の10月にひょんなことから『VRChat』を始めた筆者。年明け以降しばらくは足が遠のいていましたが、6月頃から再開し、フレンドさんとおしゃべりを楽しんだり、DJイベントに足を運んだりしつつ楽しんでいます。最近はストリーマー・スタンミさんの影響で新規ユーザーも増えているのでにぎやかで楽しいですね。

 さて、そんな筆者が『VRChat』を始めた当初から主軸にしている遊び方のひとつが「アバター改変」です。今回はこの文化について改めて解説しつつ、筆者の改変例を交えて「何をしているのか」ということを紹介していきましょう。

 まずは「アバターかいへん……? なんじゃそりゃ」という方に向けて、簡単に『VRChat』のアバター文化について説明しておきましょう。

■『VRChat』のアバター文化は文字通り“千差万別”

 『VRChat』はそもそも、3Dアバターで自由に動き回ってさまざまなワールドで遊んだり、会話を楽しめるサービスです(それゆえソーシャルVRと呼ばれたりもします)。ここで使うアバターやワールドは、容量など一定の基準を満たしていればユーザーが自由にアップロードできるのです。つまり、1から自主制作した3Dアバターを使うことも可能というわけです。

 でも、1からアバターを制作するのは非常にハードルが高いですよね。当たり前です。『Blender』や『Maya 3D』を始めとする3Dモデリングソフトは習得に時間もかかるし、外側のモデリングができたとしても、それを動かすとなればまた別のことを学ばないといけません。

 そんなユーザーの救世主となるのが、販売アバターの存在です。ピクシブ社が運営する国内最大手のマーケットプレイス「BOOTH」では、「『VRChat』への対応を明確に謳っている3Dアバター」に絞っても8,000体を超えるアバターが販売されています。

 価格はアバターによってまちまちですが、『VRChat』用の有料アバターは5,000円前後(破格の値段です)。さらにいえば「自分のショップの宣伝用なので」と無料で配布されているアバターも存在していて、かつ無料だからと手が抜かれているわけでもなく、有料アバターと同等のクオリティだったりもするわけです。どうなってるんだ一体……。

■アバターの衣装を着せ替えてカスタマイズすること=アバター改変

 前段で述べたような販売アバターにはあらかじめ衣装なども同梱されており、モノによっては数種類付属することもあります。しかし、『VRChat』においてアバターは自身の分身となる存在なわけですから、もっと個性を出したくなる、せめて他人と自分の見分けがつくようにはしたくなるのが人の性というもの。

 そこで生まれた文化が「アバター改変」というわけです。これは、アバターの衣装を、別で販売されている「衣装モデル」に変更することでカスタマイズする行為のことを指します。衣装は対応のアバターに合わせてあらかじめ調整されている場合がほとんどなので、簡単に着せることができます。

 「購入したとはいえ、3Dモデルの著作権は作者にあるんじゃないの? そんなことしていいの?」と思われる方もいるかもしれませんが、ちゃんとその辺りも含めて利用規約に明文化されており、なんなら制作者が「改変用の素体」として衣装が最初から外れた状態のデータを同梱していることもあります。

 そしてこの改変用の衣装に関しては、アバターよりもさらに多くの商品が販売されています。髪型やテクスチャ、ツールやギミック類を除いても約4万点。1つの衣装販売ページに複数アバター分を並べていることがほとんどなので、実際には数万~数十万点の衣装が販売されていることになります。

■実際、どんぐらいカスタマイズできるのよ?

 こうして販売されているアバターと衣装ですが、個別に対応されているのは一定数ユーザーから利用されているアバターであることがほとんど。素体の形状がそれぞれ異なるため「全てのアバターに使える共通衣装」を用意するのは困難なためです。

 さて、アバター改変はどうやっておこなうのか。実際にやってみましょう。必要な準備やツールがいくつかあるのですが、今回の主題は「How To 改変」ではないので準備段階のツール類の紹介は割愛。

 アバター改変に使うツールは無料のゲームエンジン「Unity」です。ユーザーはアバターや衣装のデータ、着せ替え用の支援ツールなどをUnityに読み込んでカスタムしていくというわけです。

 今回お借りしたアバターは2種類。高木恭介さんが運営するショップ「brochiManac(ブロキマナク)」の『Julius(ユリウス)』と、とまさんが運営する「on-air」の『Lowtus(ロータス)』です。

 なお、前者の『Julius』はプロモーションのために無料配布されているアバターで、誰でも無料でダウンロードして使うことができます。後者は筆者が個人的によく使わせていただいているアバターです。

眼力の強さが印象的なJulius。高木さんの制作した作品群から誕生したアバターで、唯一無二の雰囲気に惹かれた熱心なファンを抱えるショップです

あどけなさの残る顔付きが魅力のLowtus。表情を変えると、落ち着いた雰囲気とは少し異なる、茶目っ気のある顔を見せてくれます

 まずは『Julius』を改変してみましょう。衣装はりんごあめさんが運営するショップ「DRIP」の『Royal Dress』をお借りして、着せてみます。対応衣装なので、体型を合わせたりする必要は無く、そのまま着せられます(※)。

【※:『Julius』はbrochiManacがリリースしているサイズ違いの共通ボディを使用しているので、正確には少しだけスケール(サイズ)を調整する必要がある。とはいえ、等倍を0.9倍に変更するだけなので簡単におこなえる】

 こうした販売衣装の面白い点として、デザインやカラーの異なるバリエーションを同梱してくれている商品の存在。たとえば『Royal Dress』には8種類ほどのマテリアル(柄や色、質感などを設定したファイル)が同梱されているので、これを衣装に適用することで見た目を簡単に変更することが可能です。柄・衣装を組み合わせることで個性を出すことが出来るのが面白いところ。

 ところで、体型に合わせた調整を施されている衣装を「対応衣装」と呼ぶ……という話をしましたが、“そうでない衣装”=非対応衣装の場合でももちろん着せることができます。自力で調整を施す必要があるため、少し難易度は上がりますが、基本的なUnityの操作と各種ツールの力を借りれば意外に簡単に着せることができます。

 しかも、複数の衣装を組み合わせれば「このトップスと、この靴を組み合わせて……」といった形で、リアルさながらにコーデを組むことも可能。髪型や体型も自由に変えられるので「この髪型だと合わないから違うものにしてみよう」「もう少し足を細くしてみよう」といったことも可能です。一例として、Lowtusに非対応の衣装を着せてみましょう。

 使用したアイテムは以下の通り。いくつかの衣装を組み合わせてみました。小物類は標準で入っているものを使用しています。

・whimさんが運営するショップ「whimsy」の『Hatmaker -Unusual-』(髪型)

・同ショップの『GraTワンピ + Sneaker -Crow-』(ソックス+シューズ)

・メタバースヨコスカ『DOBUITA STYLE 【for Woman】』(アウター、トップス、スカート)

 余談ですが、横須賀市が展開するプロジェクト「メタバースヨコスカ」のスカジャンは、無料配布されているのにもかかわらずハイクオリティで大変驚かされた記憶があります。

 パッと見では綺麗に着せられていますよね。ですが、実際には各種ツールの支援を借りて調整しています。3Dモデルを縮小したり拡大したり、位置を調整したり……、試行錯誤しながら体型に合わせていきます。

デフォルトの状態では配置すると身体のあちこちが貫通してしまっている

これを少しづつ調整していきます。今回はあおさんが製作した支援ツール『Module Creator』で衣装をパーツごとに分けて調整しました

 というわけで、無事綺麗に着せることが出来ました! 少し慣れれば、非対応の服もこのようにして着せることができるので、対応衣装の少ないアバターだったとしても選択肢がめちゃくちゃ広がります。

 ゲーム要素のあるワールドやおしゃべり、イベント、ライブ、DJイベント、学術などなど……さまざまな楽しみ方がある『VRChat』。ゲームのキャラクリが好きな方、いわゆる見た目装備やスキンにこだわりのある方であれば、間違いなく“ドハマり”できるのが「アバター改変」だと思います(というか、筆者自身が見た目装備を集めるのが好きなタイプのMMORPGプレイヤーだったので、ものの見事に沼へはまり込んだ訳ですが)。

 筆者はいつでも一緒にワールドの隅っこで改変する仲間を募集しています。一緒にアバター改変を楽しみましょう!

〈アバター・衣装協力〉

「brochiManac」 by 高木恭介:『Julius』

「DRIP」 by りんごあめ:『Royal Dress』

「on-air」 by とま:『Lowtus』

「whimsy」 by whim:『Hatmaker -Unusual-』、『GraTワンピ + Sneaker -Crow-』