片岡仁左衛門&坂東玉三郎、20代から続く“孝玉コンビ”に「縁というしかない」「兄弟みたい」

AI要約

片岡仁左衛門と坂東玉三郎は、過去に多くの作品で共演してきた人気の歌舞伎俳優コンビであり、今回は『婦系図』で初共演する。

2人の関係性や共演の歴史について語られ、お互いの存在を尊重しながら成長した姿がうかがえる。

「婦系図」の舞台にかける思いや演じる役どころについてのコメントなど、2人の意気込みが伝わる取材会であった。

片岡仁左衛門&坂東玉三郎、20代から続く“孝玉コンビ”に「縁というしかない」「兄弟みたい」

 歌舞伎俳優の片岡仁左衛門、坂東玉三郎が8月29日、東京・中央区の歌舞伎座で行われた「歌舞伎座『錦秋十月大歌舞伎』夜の部『婦系図』」の取材会に出席した。過去に数々の作品で共演している2人が、お互いの存在について語った。

 仁左衛門と玉三郎は、仁左衛門が片岡孝夫を名乗っていた1970年代から『桜姫東文章』や『廓文章 吉田屋』、『熊野』、『怪談 牡丹燈籠』、『於染久松色読販』『神田祭』など多くの作品で共演。“考玉コンビ”として人気を博してきた。

 会見の場では、玉三郎が仁左衛門の回答をさりげなく補足や代弁するなど、“夫婦”のようなコンビネーションを見せた。元スリの言語学者で、恋人に別れを切り出す早瀬主税(はやせ、ちから)を演じる仁左衛門は、主税の好きな部分をたずねられると少し悩み、「好きな部分は申しあげない。ご覧になる方がそこを意識するから……」と回答。すると玉三郎は、「代弁すると、多面性がお好きなんだと思うのね。(これまで演じた)他の役は多面性があまりないの。主税だけはいろんな面があって、芯の部分があるのでお好きなんだと思う」とフォロー。仁左衛門が「その通り」と答えると、会場は笑いに包まれた。

 仁左衛門は、「私は役の分析ってあんまりしない。ただ身体と気持ちがついていくだけで、それを説明できない。彼(玉三郎)の場合は説明できるからね」と称賛。玉三郎が「長く、今日(こんにち)までやれてきたのは、縁というしかない」と語ると、仁左衛門も「人間的に合わないと続いていないね」とこれまでの歴史を振り返った。

 20代の頃から共演している2人の関係について仁左衛門は、「私は分析できないけど、こういう雰囲気になれる人って、大和屋(玉三郎)さんしかならないでしょ。僕もおじさん(玉三郎の養父で十四代目守田勘彌)にかわいがられ、大和屋さんもうちのお父さん(十三代目片岡仁左衛門)にかわいがられ、親父世代のその息子同時が自然と仲良くなった。縁ですよね」と懐かしんだ。すると玉三郎が再び「補足するとね」と語り、「若い時から、当時の孝夫さん(仁左衛門)と南座や新橋演舞場でずっと初役をやってきて。(仁左衛門の兄の)秀太郎兄さんや我當(がとう)兄さんとも仲が良かったから、兄弟みたいで。勝手にその中の1人と思っています」と振り返った。

 玉三郎は、「近年の世代になって、お互いが思いやることが多くなったんじゃないかしら。それが一番大きいんじゃないかしら」と20代の頃と現在の違いを語り、「ぶつかりはしないけど、昔は『あれをしたい、これをしたい』という思いがあった。今は、松嶋屋(仁左衛門)さんが何をやりたいか、それに沿って行く。この年になって2人で『婦系図』をやるってないことなので、実年齢の今、しみじみ実感があります」と語った。

『婦系図』は、明治41年(1908年)に新富座で初演されて以降、新派の代表的演目として名優たちによって上演されてきた人気作。言語学者・早瀬主税(はやせ、ちから)と、元柳橋の芸者・お蔦(おつた)の悲恋を軸に、2人を取り巻く人々を描く。今回は仁左衛門が過去5回演じてきた主税を、玉三郎が昭和58年(1983年)以来41年ぶりにお蔦を演じる。これまで数々の作品で共演している2人だが、『婦系図』での共演は今回が初となる。