あの「不思議な存在」は何なのか…『からかい上手の高木さん』を見て思い出した、意味不明の気配で近づいてくる「クラスの女子」
中学生男子の視点から、女子との関わりに対する興味深い描写が楽しい漫画『からかい上手の高木さん』について。主人公のニシカタと高木さんの微妙な関係が魅力的に描かれている。
高木さんの行動やニシカタの反応から、高木さんがニシカタを好きであることが明かされるが、ニシカタ自身にはその気持ちに気づく余裕がない。この関係の微妙さがストーリーの醍醐味となっている。
読者は、自身の中学時代の思い出や同様の経験を思い返しながら、二人の関係性に共感することができる。中学生特有の微妙なコミュニケーションが巧みに描かれている。
『からかい上手の高木さん』(山本祟一朗)は中学生を主人公にした漫画である。アニメになりドラマになり人気を博している。
いまこの作品を見ていて楽しいのは、やはり中学生男子を客観的に見ていられるからだろう。それぐらいには年を取った。
高木さんのように、中学のときに、クラスの女子が意味不明の気配で近づいてくる、というのには覚えがある。年を取っても忘れられない。
小学生のときからあった。そもそもその年代のときは、女子と男子がかなりきちんと分かれて行動していることが多いから、近寄ってくる女子は境界線を越えてわざわざこっち陣営に入ってくる不思議な存在だった。
意図が不明なので落ち着かない。
ひょっとしたら自分のことが気になっているのか、万万が一自分のことが好きなのかもしれないという考えがよぎるが、そんなことを口に出したとたん、いきなりスカされて女子みんなにばらされておもいっきりバカにされそうだから、怖くてそんなことは聞けない。
よくわからないまま、相手をするしかない。
『からかい上手の高木さん』の高木さんは、主人公ニシカタの隣の席にいる。
ニシカタは西方と書くがニシカタと書いたほうがしっくりするのでそう書く。
高木さんは、いつもからかってくる。
ニシカタにすれば意図はわからない。自分が中学生でそのポジションだったら、たぶん、まったくわからなかったとおもう。その感覚をおもいだす。
高木さんはニシカタを好きなのだ、というのは、漫画を読めばわかる。アニメを見ても、ドラマを見てもわかる。
それがこのシリーズの素敵なところだとおもう。
高木さんはおそらくニシカタが好きだけど、ニシカタのほうはそういう確信が持てない。その構図をずっと眺める。
そこが少しもどかしく、でも心地いい。
ではひるがえって、自分の中の記憶にある似たような光景で、女子のほうからからんできていたのは、あれは好意を持っていた行動だったのかとおもいかえしてみると、これはまったくそうとはおもえないものだ。何かの興味はあったのかもしれないが、好意からだったとはとてもおもえない。
そういうあたりがむずかしい。
それこそ傍で見ていた同級生に聞けばわかるかもしれないが、たぶん、男子は全員、私と同じ印象しか抱いてないだろうし、こういうのは目端の利く女子が見抜いているものだという印象が強いが、いまさらそんな大昔のことを確認したところで覚えてくれているかどうかかなり怪しい。
『からかい上手の高木さん』を見ていると、そのあたりが、むずがゆくおもいだされてくる。