こわごわ読んだ思い出…子ども時代にページをめくる手が震えた「トラウマ絵本」

AI要約

子どもの知的好奇心をくすぐり、想像力や世界感を広げる絵本について紹介。

「おしいれのぼうけん」や「なおみ」など、子ども心に恐怖を植えつけた絵本の一部を取り上げる。

怖い絵本から学べる友情や困難に立ち向かうことの大切さなどについて触れる。

こわごわ読んだ思い出…子ども時代にページをめくる手が震えた「トラウマ絵本」

 子どもの知的好奇心をくすぐり、想像力や世界感を広げてくれる絵本。クスッと笑える物語から学びのある一冊までジャンルも幅広く、子どもの頃に読んだ楽しい絵本の思い出は大人になっても消えないものだ。

 反対に、怖い絵本も記憶に残りやすい。たとえば名作『モチモチの木』(岩崎書店)などは、切り絵で描かれる世界が不気味で怖かったとたびたび話題に上がる一冊でもある。そこで今回は、子ども心に“恐怖”を植えつけた「懐かしの絵本」を振り返っていく。

 まずは、1974年に初版が発売された『おしいれのぼうけん』(童心社)。テンポの良いストーリーが描かれる、ドラマを見ているかのような気分になれる今なお読み継がれるロングセラーの絵本だ。

 あきらとさとしの通う保育園では、お仕置き場所の「おしいれ」と人形劇に出てくる「ねずみばあさん」が子どもたち共通の怖いものだった。お昼寝前の時間に騒いでおしいれに入れられた2人は、壁のシミから出てきたねずみばあさんに追いかけられてしまう。2人はねずみばあさんの支配する地下の世界から脱出すべく、ドキドキの大冒険を繰り広げる。

 多くの読者が怖いと感じたのは、田畑精一さんの描くねずみばあさんだろう。大きな身体に、人間とねずみを混ぜたような顔つきは、白黒ということもあり恐ろしさを増していた。一方で、ケンカした2人が手を取り合い恐怖に立ち向かう姿は、友情や困難に立ち向かうことの大切さを教えてくれる。

 また、おしいれに閉じ込める先生の危うい指導も怖いが、最後は「外で反省してもらえばよかった」と謝罪しその後閉じ込めることもなくなった。大人目線でも、子どもの気持ちに寄り添いながら教育をすることの大切さを学べるのではないだろうか。

 1982年に初版が発売された『なおみ』(福音館書店)は、谷川俊太郎さんの詩と沢渡朔さんの写真を綴った写真絵本だ。主人公は、6歳の「私」。生まれる前からあった自分と同じ大きさの市松人形「なおみ」に惹かれた私は、彼女と生活をともにし絆を深めていく。

 しかし、2人の関係はなおみが病気になったときを境に変わり、「なおみは しんだ わたしのそばで めを みはったまま」という衝撃の一文で終止符が打たれる。なおみのいない世界で成長した私はある日、屋根裏であの頃と同じ姿で微笑む彼女と再会し、眠る自分の娘のそばになおみを寝かせるのだった。

 なおみの死は解釈も様々だが、「私」が成長してイマジナリーフレンドのようななおみを必要としなくなったのかもしれない。

 一方、今作についてはなおみの写真が怖いという声も多数。市松人形にホラーのイメージを抱くためか、なおみのインパクトも相まって子どもの記憶に残るのは間違いない。大人になって読み返すと印象も変わり不思議な透明感を味わえるので、機会があれば読み聞かせてみてはいかがだろうか。