「父子家庭」ドラマ、描き方に変化 “不器用なパパ”の奮闘劇では共感されない時代に?

AI要約

父子家庭を題材にした夏ドラマが増えており、現代の繊細な描写やセンシティブな部分が注目されている。

過去の父子家庭ドラマの傑作『北の国から』を振り返ると、不器用な父親像が感動的に描かれ、80~90年代のコメディと感動が絶妙な配分で描かれていた。

当時は女性が育児の担い手であったが、男性の家庭育児に関わる苦労や成長、失敗を描いたドラマが視聴者に愛された。

「父子家庭」ドラマ、描き方に変化 “不器用なパパ”の奮闘劇では共感されない時代に?

 今期夏ドラマでは偶然にも“シングルファザー”が題材となったドラマが2本、放送されている。月9『海のはじまり』(フジテレビ系)と火10『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)だ。どちらも子役は“娘”であり、母親が病死、現在の相手役は年上、外部を巻き込んで家族としての関係性をどう築くか…という大枠にも共通点が見られる。ドラマにおける父子家庭のフォーマットは、以前から鉄板コンテンツとして描かれてきた。だが現代ではより描き方が繊細に。センシティブな部分も臆さず描写する変化が見て取れる。改めて父子家庭ドラマの歴史や変化について振り返る。

 父子家庭ドラマの傑作といえば、多くの人が『北の国から』(フジテレビ系)を頭に浮かべるだろう。81年より連続ドラマとしてスタートし、その後も2000年代までスペシャルドラマとして放送。東京から故郷の北海道へと戻り、大自然の中で暮らす父子とその成長が描かれた名作だ。

 故・田中邦衛さんが演じた黒板五郎は決して頼りがいのある父親像ではない。特に初期は外で面白くないことがあれば子どもに当たるなど内弁慶であり、そして情けなくもあり…。それでも悪戦苦闘しながら家族を守り、子どもたちが巣立ってからも抱えた問題について不器用ながらに向き合う姿は感動的だった。

 その後も82年に西田敏行主演の『池中玄太80キロ』(日本テレビ系)、92年に柴田恭兵、三浦洋一、風間トオルが出演した『子どもが寝たあとで』(日本テレビ系)が放送。80年代~90年代ドラマにおける父子家庭ドラマのフォーマットは「不器用な父」が家事・育児にいかに奮闘していくかコメディと感動が絶妙な配分で描かれていた。ドラマならでは(!?)ともいえる「いきなり父になる」という起承転結の「起」から始まり、家事・育児の0からスタート、外では威厳のある男性でも家に帰ったらダメダメのギャップをコミカルに。

 当時、リアルでは育児の担い手の大半が女性であった。「24時間戦えますか」というCMのキャッチコピーにも反映されているように男性は仕事に奮闘。仕事はフォーカスされるが、家庭育児という面では自由気ままに暮らすステレオタイプであったため、家庭を顧みなかった分、子への対応に男性が困り苦戦する姿は滑稽であり、そこから生まれるさまざまな葛藤と克服、失敗、成長など視聴者にとってはそれだけでも面白いエピソードになり得ていた。