京本政樹が語る『必殺仕事人』と『高校教師』出演秘話「やってよかったと思っています」

AI要約

1984年にデビューアルバムをリリースし、その後も音楽活動を続ける京本政樹。役者としても活躍し、様々なドラマに出演する中で、『必殺仕事人V』での組紐屋の竜役で大ブレイクする。

役者としての転機が訪れたのは脚本家の野島伸司さんとの偶然の出会いからであり、新たな挑戦を通じて役者としての幅を広げていく。

現在も活躍する京本政樹は、65歳になった今も演技を続け、ますます味わい深い役柄に挑戦する意欲を持っている。

京本政樹が語る『必殺仕事人』と『高校教師』出演秘話「やってよかったと思っています」

 1979年、NHK土曜ドラマ『男たちの旅路』シリーズ「車輪の一歩」でデビューし、NHK大河『草燃える』『銭形平次』(フジテレビ系)などに出演。1985年『必殺仕事人V』(テレビ朝日系)の組紐屋の竜役で大ブレイクを果たした京本政樹。ミュージシャンとしても活動するかたわら、幅広く活躍する彼の“THE CHANGE”に迫る。【第2回/全2回】

 そうやって、役者の仕事も真剣にやりながら、音楽の仕事も諦めずに頑張っていたら、84年にはデビューアルバムの『ラブレーの15分』をリリースすることができました。全10曲、すべて僕の作詞作曲です。その後はベスト盤も含めて16枚、アルバムをリリースしてます。やっぱり、思い通りにいかないときでも、諦めないでいることが大事なんだなと思いましたね。

 役者としての転機も、ちょうどその頃です。今でもよく覚えていますが、ある日、大川先生からこんなことを言われました。

「『必殺』を見たことあるか?」

 ご存じ、藤田まことさん主演の『必殺仕事人』シリーズのことです。「これからの時代劇は、『銭形平次』のような分かりやすい勧善懲悪ではなく、『必殺』のような時代劇が流行る」

 たしかに見てみたらかっこいい。ちょうど僕が出演していた現代劇のアクションドラマ『京都マル秘指令 ザ新選組』の制作が朝日放送と松竹で、『必殺』と同じ方がプロデューサーだったご縁があったので、出してもらえないか相談してみたんです。

 でも、当時の『必殺』は中条きよしさんと三田村邦彦さんが人気絶頂で、僕の入る余地はありませんでした。ところが数か月後、このお二人が次回のシリーズから降板するということになったんです。

 そこで演じたのが、「組紐屋の竜」。クールでニヒルな殺し屋ですが、これが本当にハマりました。

 ただ、ハマりすぎて、そのイメージが強くなってしまったんですよね。そんな中、90年代に入ってから喫茶店で偶然、脚本家の野島伸司さんと会ったんです。その場で「実は京本さんにピッタリ合う役があるんですよ」と言われたのが、TBSのドラマ『高校教師』の藤村知樹の役だったんです。

 ドラマは大ヒットしたのですが、一方で「あんな過激な役をよくやりましたね」と言われましたね。

 でも、僕にとっては、自分自身が「時代劇のヒーロー役から脱皮する」と、ものすごく前向きに挑戦した役だったので、やってよかったと思っています。

 8月8日から11日まで、銀座の博品館で、渡辺裕之さんが生前深く関わっていた『シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~受け継ぐ者達』で、“ナベさん”が演じていたシーボルト父を演じます。

 ナベさんとはデビュー当時から仲が良く、数々の映画・ドラマでの共演はもちろん、僕が作詞・作曲・プロデュースを担当した5人組の音楽ユニット『GARO Project』ではドラムを担当してくれたりと、まさに盟友と言えるような存在でした。

 時代劇出身の僕にとっては、なかなかハードルの高いストレートプレイで、最初はお断りしようかと思っていたのですが、ナベさんと撮影現場で同じ時間を共有した日々を思い出すにつれ、何の根拠もないのに「僕なりのシーボルトを精いっぱい演じてみよう」と決断しました。

 僕も今年で65歳になりました。人生経験を積んだ、味のある演技をこれからも追求し続けていきたい。そう考えています。

京本政樹(きょうもと まさき)

1959年1月21日、大阪府高槻市出身。79年、NHK土曜ドラマ『男たちの旅路』シリーズ「車輪の一歩」でデビュー。その後、NHK大河『草燃える』『銭形平次』(フジテレビ系)などに出演し、85年『必殺仕事人V』(テレビ朝日系)の組紐屋の竜役で大ブレイク。ミュージシャンとしても活動するかたわら、舞台、映画、バラエティ番組など幅広く活躍中。

THE CHANGE編集部