東宝の特撮映画『ガス人間第一号』リブートプロジェクト始動 プロデューサー&監督が経緯を語る

AI要約

『ガス人間第一号』がNetflixと東宝の初タッグにより実写シリーズ作品としてリブートされることが発表された。

主要キャストは小栗旬と蒼井優で、23年ぶりの実写共演となる。

脚本開発から3年かけて制作され、日本と韓国の文化の違いに対処するために韓国で脚本合宿も実施された。

東宝の特撮映画『ガス人間第一号』リブートプロジェクト始動 プロデューサー&監督が経緯を語る

 東宝の伝説的特撮映画『ガス人間第一号』が、動画配信サービス「Netflix」と東宝の初タッグにより、実写シリーズ作品としてリブートされることが発表された。企画の構想から6年、脚本開発から3年、そしてクランクインを間近に控えた、エグゼクティブプロデューサー・脚本のヨン・サンホと片山慎三監督が経緯といまの心境を語ったコメントが到着した。

 映画『ガス人間第一号』は『ゴジラ』の生みの親である本多猪四郎が監督を務め、1960年に東宝製作・配給で劇場公開された。社会構造の闇を突き抜けた娯楽性で傑作SFスリラーへ昇華した、半世紀以上の時を経てなお語り継がれる作品。数多のクリエイターに刺激を与え、国内外に熱狂的なファンを抱える映画が、現代日本を舞台にした完全オリジナルストーリーのNetflixシリーズ『ガス人間』として生まれ変わる。メインキャストは、小栗旬と蒼井優が決定しており、2人は23年ぶりの実写共演となる。

 エグゼクティブプロデューサー・脚本を務めるヨン・サンホは、映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)、Netflixシリーズ『地獄が呼んでいる』(21年)、『寄生獣 -ザ・グレイ-』(24年)など、次々と世界的話題作品を生み出し続けるヒット作の請負人。

 片山監督は、映画『パラサイト 半地下の家族』(19年)などのポン・ジュノ監督のもとで助監督を務め、映画『岬の兄妹』(19年)、『さがす』(22年)、配信ドラマ『ガンニバル』(22年)など野心作を次々手がけており、ヨン・サンホもその才能に惚れ込んでいる。

 また、世界から注目を浴びるグローバルコンテンツ制作会社のWOW POINTが共同企画・制作で参加し、『寄生獣 ーザ・グレイー』で脚本を執筆したリュ・ヨンジェが今作でも共同で脚本を執筆する。

 なお、以下のヨン・サンホと片山監督の対談は、約70年の歴史を誇り、数々の傑作が生まれてきた特撮映画の「聖地」東宝スタジオ第9ステージにて敢行された。

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――ヨン・サンホさんは2018年に東宝の馮年プロデューサーと対面されて、その際に提案された題材の中から『ガス人間』を選ばれたと伺いました。どういった部分にひかれたのでしょう。

【ヨン】私は元々サブカルチャー映画が好きで、東宝の特撮映画にも興味を持っていました。そんな中、東宝さんから「変身人間シリーズ※」の再映像化企画を提案いただいたのです。『ガス人間第一号』は1960年の映画ですが、いま観ても非常に完成度が高くSF的な表現も巧みな素晴らしい作品でした。現代的な映像作品として新生したら、きっと面白いものになるものになると感じました。

※東宝が1950~60年代に発表した『透明人間』(54年)『美女と液体人間』(58年)『電送人間』(60年)『ガス人間第一号』(60年)等のジャンルの総称

――その後、監督として片山慎三さんに白羽の矢が立ったのですね。

【片山】当時『ガス人間第一号』の存在を知ってはいましたが観たことはなく、拝見したらとても面白くて。ガス人間という荒唐無稽なクリーチャーこそ出てきますが、そこに人間ドラマや恋愛要素が詰まっていて、非常に惹かれました。昔の特撮モノを現代のCGで新生して、人間ドラマも盛り込んだらとてもいい作品になるのではないか、と感じました。

【ヨン】東宝さんから片山監督のお名前を伺い、まずはドラマ『さまよう刃』(21年)を拝見しました。この作品は韓国でも映画化されていますが、片山監督バージョンが1番面白く、完成度が高いと感じました。キャラクターの感情の引き出し方やカメラワークの創意工夫を目の当たりにし、片山監督の演出力にひかれたのです。

 実際に『ガス人間』の監督を引き受けていただけるかは置いておいて、個人的に彼のことが知りたくなってFacebookでメッセージを送らせていただきました。その後に映画『岬の兄妹』、『さがす』を拝見し、やはりすごい監督だと確信しましたね。私が脚本を書いてはいますが、片山監督の手から新しい作品が生まれてくることをとても楽しみにしています。

――約3年がかりで脚本を制作され、韓国で脚本合宿もされたそうですね。

【片山】シーンを考えるときに、ヨンさんがその場で演じてくれるんです。1人3役くらいを兼ねて下さったのですが、その芝居がとても上手でぜひ出ていただきたいと思うくらいでした。

【ヨン】私が「こういう芝居はどうですか」と片山監督に見せたら、その場でOKとNGを出してくれました。なかなか芝居にOKを出してくれないジャッジに厳しい監督だと感じましたね(笑)。

【片山】いやいや、素晴らしくて「ヨンさんは芝居もできるのか」と思いましたよ(笑)。1年半から2年をかけてヨンさんと脚本家のリュ・ヨンジェさんがベースとなる脚本を書いて下さいました。それを僕が読ませていただき、何度か打ち合わせをさせていただく中で韓国で脚本合宿も行ったという流れになります。やはり、日本と韓国の文化で差異があるため、細かいところを詰めるために面と向き合って話し合う方がやりやすいだろう、ということで。

【ヨン】脚本作りにおいては、韓国人である我々が日本を舞台にして物語を書くところが最初の難関でした。新しい『ガス人間』を作り出すために、日本の作品を数多く観てインスピレーションを得ようとしました。

 日本のクリエイターが韓国で作業する場合と韓国のクリエイターが日本で作業する場合、それぞれありますが、情緒的な部分が異なるため、ぎこちなさを感じる場合があると思います。今回の作業では、片山監督と東宝のプロデューサーたちと脚本の小さな部分も日本ではどう感じるかについて多くの会話を交わし、それらを受け入れようと努力しました。外国人が書いた脚本ですが、日本社会で実際に起きていることのように感じていただく事が必要であると思います。そういうところは片山監督と東宝のプロデューサーから大変助けを受けました。