森口博子「アニソンは生涯の財産」 歌手に憧れた少女が「ガンダム」と出会い、不動の存在になるまで

AI要約

森口博子(56)が、アニソンをカバーしたアルバム第2弾「ANISON COVERS 2」を発売。歌手になりたいという思いから幼少時代から様々なオーディションを受け、アニソン界で活躍する道を歩んだ。

デビュー曲「水の星へ愛をこめて」が、アイドルブームの中でリリースされたが、他のアイドルたちと比べて地味な存在として扱われ、苦労もあった。

同期のアイドルや事務所の状況など、当時のアイドル業界の厳しさと競争について振り返りながら、森口のデビュー時の背景を紹介。

森口博子「アニソンは生涯の財産」 歌手に憧れた少女が「ガンダム」と出会い、不動の存在になるまで

 森口博子(56)が、自身も思い入れの深いアニソンをカバーしたアルバム第2弾「ANISON COVERS 2」を8月7日にリリースした。アイドルを夢見た幼少時から、クビを免れてバラエティ番組に踏み込み才能を発揮したバラドル時代を経て、今やアニソンのレジェンドと肩を並べる存在となった。アニソン界に一つの土台を作っているが、その根底には「歌を歌いたい」という普遍であり不変の思いが横たわっていた。

「4歳から歌手になりたかった。いろんなオーディションを受けまくって。だからデビューしたときには、やっとデビューできた、という気持ちでしたね」

 ブラウン管の中で展開されるキラキラした世界への憧れは、5歳の時に「ちびっこものまね紅白歌合戦」の福岡予選を勝ち抜き、生バンドで歌う中野サンプラザで行われたテレビ放送のある全国大会へ出場したことで、確たるものとなった。

 中学に上がってからは、ホリプロタレントスカウトキャラバンをはじめ、名のあるオーディションはどれも受けた。中には富田靖子が主演を射止め、松下由樹のデビュー作にもなった映画「アイコ十六歳」(1983年)で、富田とともに福岡県代表として最終オーディションまで臨んだこともあった。

 受けては落ち、受けては落ち、を繰り返し、涙に暮れる中で、ようやくつかんだのが、アニメ「機動戦士Zガンダム」の主題歌を歌う歌手を探すオーディションでの合格。高校2年になっていた。

 デビュー曲「水の星へ愛をこめて」は1985年8月7日に発売された。同じ年におニャン子クラブもデビューしたが、まだまだアイドルといえばソロデビューするケースが圧倒的に多かった。中山美穂や本田美奈子、芳本美代子のほか、斉藤由貴、南野陽子、浅香唯らTVドラマ「スケバン刑事」シリーズの主演を務める3人や、今もなおバラドルとして活躍する井森美幸も同年デビューだ。

 ちなみにデビュー曲について、「水の星ってわかる?」とディレクターから尋ねられた際に「えっと……水星?」と答えたあたりに、すでに後のバラドルとしての資質の片鱗がうかがえる。

 同期の一人に松本典子がいた。森口と同じ事務所に所属していた。

「あの頃のアイドルって、その年に社運をかけて各事務所がプッシュする体勢の時代だったんですよ」

 松本が3月にデビューしたのに対し、森口のデビューは「機動戦士Zガンダム」の後期オープニングテーマとして使用が始まる直前の8月。同事務所の同期アイドルの後塵を拝していたことに加え、今でこそ、アニメ関係のテーマソングが世界で絶賛されているのに対し、「当時はまだ地味な存在として扱われていた」という背景もあり、デビュー曲はスマッシュヒットしたものの、「仕事がもらえずにスケジュールは真っ白だった」という。

「なんであの子ばかり、と思っていましたね」

 自分がプッシュされない悔しさをかみしめていたことを、苦笑しながら振り返る。