『SHOGUN』前夜の物語。マンガ『センゴク』で知る戦国時代のド迫力のリアル

AI要約

『SHOGUN』は、戦国時代末期の日本を舞台にしたドラマで、将軍の座を巡る争いを描いて人気を集めた。

『センゴク』は、戦国時代のサムライたちの姿をリアルに描いたマンガで、活劇や戦いに明け暮れたサムライたちの真の姿を解き明かす。

『SHOGUN 将軍』は世界的なヒット作であり、史実を元にした歴史ドラマであり、第76回エミー賞でも注目を集めている。

『SHOGUN』前夜の物語。マンガ『センゴク』で知る戦国時代のド迫力のリアル

堀田 純司

世界中で話題のドラマ『SHOGUN』は、戦国時代末期の日本を舞台に将軍の座を懸けた争いを描く物語。その戦国時代のサムライたちの姿を克明に描写して人気となったマンガが『センゴク』だ。血湧き肉躍る活劇が描く、戦いに明け暮れたサムライの真の姿を読み解く。

ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のFXが製作した歴史ドラマ『SHOGUN 将軍』が世界的にヒット。第76回エミー賞では作品賞を含む主力25もの部門でノミネート入りし、主演の真田広之は主演男優賞の候補となっている(授賞式は9月16日)。

この作品の原作は英国の小説家ジェームズ・クラベルが1975年に発表した『将軍』。舞台は1600年の日本で、漂着したイギリス人の船乗り、ジョン・ブラックソーンの目を通して、当時のサムライたちの熾烈(しれつ)な権力闘争が描かれる。

ジョン・ブラックソーンは日本で吉井虎長(とらなが)という領主と出会った。吉井虎永もジョン・ブラックソーンも、そして劇中で彼の通訳を務めた戸田鞠子(まりこ)も架空のキャラクターだが、そのモデルは実在の人物で、(よく知られるように)ドラマの設定には史実が濃厚に盛り込まれていた。

もともと日本の統治者と言えば「天皇」。しかし中世に入ると辺境の開拓領主層からサムライ階級が台頭し、そのリーダー「将軍」が権力を掌握する。12世紀も後半のことだ。

天皇は2度にわたり反撃を試み、14世紀には実権を奪還した。しかし武士の足利尊氏が離反。結局、彼が再び「将軍」となり、武士の政権が続くことになる。

しかし足利将軍の政権「足利幕府」は内部に抗争の火種を抱えていた。15世紀には内乱が広がり、やがて日本各地に大名たちの小王国が乱立。互いに争いを繰り広げる「戦国時代」に突入することになった。

ドラマ『SHOGUN』のシーズン1は、その「戦国時代」の最終段階が舞台だ。歴史上では徳川家康、ドラマでは吉井虎永が新たな将軍となり、争いを終わらせる姿が描かれる。

『SHOGUN』の中のサムライたちの行動原理は「忠義」。彼らは主君に対して絶対の忠誠を誓っていた。そうしたサムライたちの背景にある思想は「宿命」。人にはそれぞれ「宿命」がある。もし宿命が滅びをもたらすのであれば、人は自ら死を選ぶことであらがってみせる。その死の儀式が「切腹」だった。

だが「戦国時代」の最終段階が舞台である『SHOGUN』の時期のサムライが、「サムライとはかくあるべし」という思想によって生み出された人工的な存在であるとすると、戦国時代まっただ中のサムライはまた違っていた。もっと粗野な自然人だった。

彼らはより欲望に忠実で、実は「忠誠」は絶対の原理ではなかった。自分の働きに対する評価が不当であったり、主君が無能であると感じたりすれば、サムライのほうから主君を見限るのは当たり前。大事なのは自分の実力を発揮できる場所と名誉だ。

要するに戦国時代のサムライはとことん「生」にこだわる、血の熱い人々だった。2004年から「週刊ヤングマガジン」で連載された宮下英樹氏のマンガ『センゴク』は、そうした戦国時代の「リアル」を描いた大河作品だ。