《父・手塚治虫が心配し大島渚が驚愕》「観客を不幸のどん底に突き落とす」手塚眞監督(62)が19歳で撮った映画『MOMENT』の恐るべき展開

AI要約

手塚眞監督が自主映画『MOMENT』の結末について語る。映画の前半と後半が対照的であり、意外な展開があることに多くの視聴者が驚いた。

手塚治虫の息子である手塚眞監督は、父親からも結末について質問を受けるほど衝撃的なラストになっており、大島渚監督も驚かれたが否定はされず、新たな興味を持たれた。

手塚眞監督は本作で楽しさと地獄の間で揺れ動く視聴者の感情を表現したかったと述べており、映画の構造や裏返しの演出に関して語っている。

《父・手塚治虫が心配し大島渚が驚愕》「観客を不幸のどん底に突き落とす」手塚眞監督(62)が19歳で撮った映画『MOMENT』の恐るべき展開

〈「『ジョーズ』の一番怖いシーンは?」手塚眞監督(62)がスピルバーグの名作から学んだ“恐怖の演出術”《死んだ漁師さんの顔が…》〉 から続く

 日大芸術学部在籍時の19歳で撮った8ミリ作品『MOMENT』は自主映画界に旋風を巻き起こした。日本映画界の「青春時代」を描くインタビューシリーズ第3弾。(全4回の3回目/ #1 、 #2 、 #4 を読む)

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手塚 『MOMENT』は、最後が結構残酷に終わるんですよ。それを見て意外だと思った人は多かった。

―― 前半は、とてもかわいくてポップな映画で、それを楽しんで見ていると、後半すごい展開になります。

ポッキーは元気な女の子。的中率100パーセントの占いのおじさんのおかげでテストは合格点。お財布は拾うし、ステキな男の子は見つかる、と大ラッキー。でも肝心の今後の占いは、あたしが死ぬって? ――『MOMENT』DVDより

手塚 クライマックスが非常に残酷で。みんな死んでしまう。さすがにうちの父親も脚本を読んで、最後に全員死んじゃうのはどうかと言って、誰か残すことはできないかとか、いろいろ心配してくれてましたね。

―― 手塚治虫さんこそそういう人ですけど(笑)。

手塚 僕もそう思ったんです。「あなたの漫画だってそうじゃないですか」って言いたかったけど。『FANTASTIC★PARTY』が本当にほんわかした、希望とか夢を感じさせる映画だったので、逆にその希望とか夢を全部断ち切ったような『MOMENT』のラストシーンというのは、大島渚監督も驚かれたみたいで。ただ、大島監督は「意外だったけど、逆にもっと作品を見たくなった」といたずらに否定はしなかったです。

―― 手塚さんはそれこそがやりたいことだったんですね。

手塚 ひっくり返すというか、裏返すことをやりたかった。それも本気で裏返す。楽しさの頂点からいきなり不幸のどん底に突き落とされる感覚というのをやってみたかったんです。

―― 途中、手塚さん自身が監督役でも出て進行している映画にカットをかけたり、メタ的というか、映画であることにすごく自覚的な演出ですね。

手塚 ある種の楽しさとか、無為なエンターテインメントのピークみたいなものが途中にあって、最後が全く真逆で本当に地獄のような場面で終わるという構造です。ちょうど真ん中でそれがブツッと切れてそうなっていっている。

―― その橋渡し的なシークエンスでもあったんですね。