シャアだけじゃない…昭和の「少佐キャラ」に“イケメン&有能”が多かったのはなぜなのか

AI要約

漫画やアニメに登場する「少佐」キャラクターの特徴や人気について振り返る。

「シャア・アズナブル」や「クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐」など、昭和から平成にかけての代表的な「少佐」キャラの紹介。

「少佐」という階級には若くて優秀な要素があり、クールで強キャラなイメージが根付いていた。

シャアだけじゃない…昭和の「少佐キャラ」に“イケメン&有能”が多かったのはなぜなのか

 漫画やアニメを振り返ってみれば、「少佐」の肩書きを持つ人物は、ライバルなどの重要ポジションに配置されたうえ、“二枚目”で“強キャラ”の設定で描かれるのが鉄板だった。

 少佐と呼ばれる階級は、多少の差異はあれど軍事職における「出世の登竜門」とされ、大尉から少佐に昇進できるか否かがエリート街道のわかれ道。そのため、士官学校を卒業して数年で昇進した者は優秀と目され、創作物の中でも「若くて優秀=少佐」の図式が生まれたのかもしれない。 

 そこで今回は、アニメや漫画などに登場した昭和から平成にかけての「少佐キャラ」を振り返りつつ、その傾向や多かった理由について考察してみたい。

 多くのアニメファンが「少佐」と聞いて思い浮かべるのが、『機動戦士ガンダム』(1979年放送開始)に登場した、ジオン公国軍の「赤い彗星」ことシャア・アズナブルかもしれない。

 シャアは、一年戦争の開戦早々に地球連邦軍の戦艦5隻を沈めた功績などにより、20歳の若さで少佐に昇進したエリート将校。彼のトレードマークである仮面の下は眼光鋭いイケメンで、影ある生い立ちや抱く野望から男女問わずファンが多い人物である。

 当時、一部ファンの間で「シャア少佐!」を連呼する早口言葉が流行ったのも懐かしいが、劇中のわりと早い段階で「中佐」を経て「大佐」へと昇進を果たしたのには、実は「ある大物声優」の嘆きがあったという。

 当時ナレーション担当していた声優の永井一郎さんが「シャア少佐は言いづらい」と富野由悠季監督に訴えたところ、ならばとシャアを中佐に昇進させたというのだ。この件は、37年もあとの2016年に、『機動戦士ガンダムUC』の公式SNSにて「富野監督から聞いた話」として公表されている。

 また、『ガンダム』と同時期に少女漫画の誌面にも、有名な「少佐」キャラが二人も登場していた。

 ひとりは、『月刊プリンセス』(秋田書店)などで長期連載されている、青池保子さんによる怪盗&スパイ活劇『エロイカより愛をこめて』(1976年連載開始)に登場する、北大西洋条約機構(NATO)のドイツ人将校クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐(以降、少佐)だ。

 同作は美術品泥棒「エロイカ」こと、ドリアン・レッド・グローリア伯爵(以降、伯爵)を主役とした物語だが、少佐は「鉄のクラウス」の異名を持つ硬派ぶりに加え、レオパルド戦車で伯爵を嬉々としながら追い回すハチャメチャさでも人気となった。

 ストイックでハンサムな少佐には女性ファンが多く、筆者は今もなお「クラウス~」からはじまり「~少佐」で締めくくる、彼の長い長い名前をソラで言える。

 もうひとりが、『花とゆめ』(白泉社)などで長期連載されている、魔夜峰央さんのギャグ漫画『パタリロ!』(1978年連載開始)に登場する凄腕エージェントことジャック・バルバロッサ・バンコラン。軍から出向するかたちでイギリス情報局秘密情報部(MI6)に所属するバンコランの階級も「少佐」だ。

 バンコランは「美少年殺し(キラー)」の異名を持つ超美形なプレイボーイで、とくにその眼力は一瞬で美少年たちをとりこにするほど。そんな彼も、主人公のパタリロ・ド・マリネール8世に関わってからは、日々おちょくられている。

 70年代後半の当時は彼ら3人の影響もあってか、「少佐」といえば、クールな“二枚目”で“強キャラ”のイメージがあった。さらにクセの強い主人公から翻弄される苦労人……というポジションも目立った。