藤井聡太を下した伊藤匠・新叡王の師匠が明かす「わが弟子のズバ抜けていた一つの才能」

AI要約

5歳の時に偶然訪れた道場で将棋を学んだ少年が、16年後に八冠を獲得し新時代を切り開く。恩師が語る喜びと感謝の気持ち。

将棋界を騒がせた伊藤匠叡王のタイトル獲得により、師匠の宮田八段は多くの祝福を受ける。伊藤の幼少期からの成長や、叡王戦での大活躍について明かす。

最終第5局での激戦や、伊藤の驚異的な指し手について解説。将棋界の未来を占う若手棋士たちの戦いが注目される。

藤井聡太を下した伊藤匠・新叡王の師匠が明かす「わが弟子のズバ抜けていた一つの才能」

たまたまなのか、それとも運命か。5歳の時にふらりと道場にやってきた少年が16年後に八冠を下し、将棋界の新時代を切り開いた。その喜びと思い出、そして新叡王の素顔について恩師が明かした。

「伊藤がタイトルを獲得したその日だけで、150件以上のメッセージが届きました。もちろん私の人生における最高記録。まあどえらい騒ぎですよ」

スマホの画面をスクロールして、続々と届いた祝福の言葉を眺めながら、宮田利男八段(71歳)は笑みを浮かべた。去る6月、将棋界の全タイトルを独占していた藤井聡太八冠(当時)から「叡王」を奪取し、一躍時の人となった伊藤匠叡王(21歳)。その伊藤が幼少期から師事したのが、東京・世田谷区の「三軒茶屋将棋倶楽部」で席主を務める宮田八段だ。

「3年前、伊藤が『新人王戦』という若手棋士の大会で優勝したときにもお祝いのメッセージが来たのですが、その時は30件ほどでした。それでも大騒ぎしたのに、今回は反響がケタ違い。やっぱりタイトル獲得は重さが違いますね。この私が地元で行き交う人から声をかけられ、握手を求められるほどですよ(笑)」

史上初の八冠が防衛記録をさらに伸ばすのか。それとも同い年の新星が、その一角を崩すのか―将棋界のみならず、一般メディアの注目も集めた今回の叡王戦。互いに譲らず2勝2敗のフルセットにもつれこんだ五番勝負は、早くも「棋界の歴史に残る熱戦」と称されている。

最終第5局で立会人を務めた深浦康市九段が振り返る。

「互いに得意としている『角換わり』という戦法の将棋となりましたが、後手番の伊藤さんが58手目に4九角という決断の一手を放ち、控え室を驚かせました。事前の深い研究がなければまず指せない手ですが、これがもし藤井さんだったら、おそらく伊藤さんと同じ手を指していた気がします。いまや棋界のトップを走る2人ですが、棋風や感覚、研究内容が似てきたなと思います」

将棋は藤井優勢のまま中盤に突入したように思われたが、粘り強く正確な応手を続けた伊藤が次第に優勢を拡大。最後は藤井が王手ラッシュをかけるも伊藤が読み切り、決着がついた。