「DA PUMP」のKENZO、ブレイキンでパリオリンピックに挑むSHIGEKIXと熱いダンストーク「スーパースターになってほしい」

　パリ五輪で初めて実施されるブレイキン（ブレイクダンス）男子のSHIGEKIX（本名・半井重幸、22）＝第一生命保険＝とダンス＆ボーカルグループ「DA PUMP」のKENZO（39）が、熱いダンストークを交わした。DA PUMPの新曲「Pump It Up！」のミュージックビデオ（MV）でも共演。ストリートダンス国際大会13冠のKENZOは、花の都での「スーパースター」誕生を願った。（占部哲也）

　ダンスをこよなく愛する2人のトークは熱を帯びた。「Pump It Up！」は日本ダンススポーツ連盟ブレイキンの応援歌。東京・渋谷のど真ん中で撮影したMVでは、熱量の高いダンスを披露した。SHIGEKIXはパリ五輪で初採用となるブレイキンの金メダル候補、日本選手団の旗手も務める”顔”だ。

　―13の国際タイトルを持ち、大会の審査員も務めるKENZOさん。SHIGEKIX選手のすごさを教えてください

　KENZO（以下、K）「10代の時から知っているけど…。頭の中にめちゃくちゃ出てきている。数千はね（笑）。一つ挙げるなら、フィジカルがずばぬけている。決勝までクオリティーを落とさない。そこは世界の誰にも負けない」

　SHIGEKIX（以下、S）「称賛が止まらない（笑）。ありがとうございます」

　―SHIGEKIX選手は、昨年末のNHK紅白歌合戦ではKENZOさんの振り付けで郷ひろみさんと共演。DA PUMPのMVにも出演して感じたことは

　S「どこから見られてもかっこいいように360度意識されていた。ブレイキンでも意識はするけど、1対1のバトルの時には相手に向かって踊る意識が強い。魅せるパフォーマンスという点で学ぶことも多かった。郷さんからはスターのオーラを感じました。お会いした朝からずっと周りへの気遣いがあって、優しさも感じて改めてファンになりました」

　―パリ五輪でブレイキンが採用され、世界中の人々が目にします

　K「今ようやくスターになる人間が出てきた。夢を託せるんじゃないかな。自分が世界大会で優勝した時、ちょうど五輪期間中で柔道の選手が金メダルをとったことがあった。2008年かな。周りは拍手して、『感動した』って口々に言っていた。でも、僕の優勝はダンスをやっている人しか知らない。明日からまた挑戦者だなって思った記憶がある」

　―でも、重そうな先輩からの”たすき”ですね

　S「上の世代の人たちからは『自分に五輪のチャンスがあったら全力で行くわ』って言われます。五輪はたくさんの人が同じ瞬間に見て、共有する。上の世代が見たかった景色。熱い気持ちで『存分に楽しんで』と言ってもらえるので、すごく背中を押されます」

　―ダンスとは

　K「元々ダンスの原型は言葉よりも前にできたそうです。感情表現。愛を伝えたいからダンスをする。雨乞いをしたいからみんなで踊る。言葉よりも世界共通のコミュニケーションツールになる」

　S「僕は踊ることが自己表現。自分自身と向き合っていく中で構築していって、それをステージ上で相手にぶつける」

　―最後にパリに向かう後輩へエールを

　K「スーパースターになってほしい。あの人を見ていたらすごい元気になるよね、笑顔になるよね、やっぱりいいよねって存在。そう、郷さんみたいな。技術以上のもの。それを発信できる存在になれると信じている」

　SHIGEKIXはゆっくりと静かにうなずいて言った。「追い求めるものがあるからこそ楽しい」。道を切り開いてきた先輩の言葉を背負うのではなく、背中を押された。ブレイキン男子決勝は8月10日（現地時間）。「調和」「協調」を意味するコンコルド広場からスーパースターへの大きな一歩を踏み出す。

　♠KENZO（けんぞー）　1985年1月21日生まれ、福岡県出身。2008年にDA PUMPに加入。世界的ダンサーとして10～17年に8年連続世界大会を制覇。19年にはストリートダンス大会「Lock isNot a Joke 2019」で優勝、国際大会13冠を達成した。ストリートダンスの主要大会で審査員も務め、アーティストの総合演出や振り付けも手がける。

　♠SHIGEKIX（しげきっくす）　2002年3月11日生まれ、大阪府出身。10代前半で頭角を現し、18年世界ユース選手権で優勝。同年のユース五輪では銅メダルを獲得した。20年には世界最高峰の大会「Red Bull BC One」を歴代最年少18歳で制した。23年杭州アジア大会で金メダルを獲得し、パリ五輪の出場権を得た。