JO1が「正真正銘、唯一無二のグループ」である音楽における特異点

AI要約

JO1はデビューシングル『PROTOSTAR』から最新シングル『HITCHHIKER』まで幅広い音楽性を体現しており、その軌跡を紐解く。

デビュー曲ではK-POP勢が挑戦したダンスミュージックの日本語解釈を行い、次第に進化し続けている。

最新シングル『HITCHHIKER』ではファンクに焦点を当て、JO1の唯一無二の音楽性を証明している。

JO1が「正真正銘、唯一無二のグループ」である音楽における特異点

『Quick Japan』vol.172(6月5日発売)の表紙と40ページ以上にわたる総力特集「時代を変える11の夢」に登場したグローバルボーイズグループ・JO1。

彼らはデビューシングル『PROTOSTAR』から最新シングル『HITCHHIKER』、さらに全3枚のアルバムや数々の配信シングルまで、想像以上に多様な音楽を体現してきた。

ここでは『わたしはラップをやることに決めたフィメールラッパー批評原論』や『オルタナティヴR&B ディスクガイド』の著者・つやちゃんが、全8作のシングルからJO1が歩んできた“音楽の軌跡”を紐解いていく。

■フレッシュさみなぎる第一歩/DEBUT SINGLE『PROTOSTAR』(2020年3月4日発売)

デビューから4年以上が経過し、今となってはアイドルグループによるこのようなサウンドはスタンダードになった。しかし、当時は驚いたものだ。K-POP勢が果たしてきたダンスミュージックの歌モノ解釈を、日本語で試行するという挑戦。「無限大」はEDMの形式を基軸に、さまざまなパートが継ぎぎされメンバーのキャラクターがラップ/歌によって魅力的に表現される。サビは潔く「無限大」と日本語で歌われ、その自信みなぎる発音、ストレートさに背中を押される気分に。「La Pa Pa Pam」は「よたよたSteppin’」の部分をはじめ、2010年代のトラップミュージックのラップ感覚を高い次元で消化。フレッシュさみなぎる第一歩!

■“身体に刺激を与える”音のそろい踏み/2ND SINGLE『STARGAZER』(2020年8月26日発売)

DEBUT SINGLEで打ち立てたEDM×歌モノ路線を、さらに進化させた2ND。ダンサブルなエレクトロニックサウンドがとびきりリッチな音質で鳴る「OH-EH-OH」は音韻が気持ちよく、「So What」では重低音を轟かせベース音が地を這う。明らかに以前のJ-POPではあり得ない音圧、低域に重心が置かれたトラック、縦横無尽に駆け巡るボーカルが痛快。K-POPを主戦場とするプロデューサー陣がズラリとそろい、“身体に刺激を与える”音をこれでもかと敷き詰めた楽曲群を聴いていると、四方八方に回り突き進むジェットコースターのようで、自然と笑みがこぼれてしまう。まさにやりたい放題、キテレツなサウンドがとにかく楽しい。

■肩の力が抜け、楽曲のよさが前面に/3RD SINGLE『CHALLENGER』(2021年4月28日発売)

ここまでの“STAR期”を終え、グループとしての余裕が見え始めたシングル。トラック面も歌唱面も、前作までのぎっしり凝縮された手数の多い展開を踏まえた上で、今作ではもう少し引きの視点でそれぞれ楽曲全体としての魅力を引き立てるよう工夫がなされている。それが顕著に表れているのが、「Born To Be Wild」だろう。凝ったサウンドという印象は残しつつも、各パートがスムーズにつながれ、流麗なメロディがいっそう際立つようになった。同時に、ファンクの香りが漂っているのもセクシーだ。そういったバランスのよさが生む完成度は、「Design」にも当てはまる。肩の力が抜け、純度の高い楽曲のよさが前に出ている。PVも素敵。

■新たな一面が見え始めた一枚/4TH SINGLE『STRANGER』(2021年8月18日発売)

このあたりから、JO1にまた新たな一面が見え始める。収録曲の「Dreaming Night」が象徴的で、キュートな振り付けがさかんに言及されるが歌のユニークさもすごい。これまでなかった発声方法にトライしているパートもあり、変化球のボーカルとトラックが相互作用を起こしながら鼓膜をくすぐる。「STAY」も、新たな一手だろう。シティポップ的懐かしさから始まり、サビでダンスポップに変化する心地よいグルーヴは自然と身体を揺らすし、こういったジャンルは日本のグループがやるからこその説得力がある。「REAL」も、優しく語りかける冒頭からサビへと徐々に盛り上げリズムを変化させており、アレンジの巧みさが際立つ。

■JO1印の巧みなボーカルスキルを披露/5TH SINGLE『WANDERING』(2021年12月15日発売)

ボーカル主体で聴かせるナンバーが勢ぞろい。「僕らの季節」「Prologue」でじっくり聴かせたのちに、後半はダンスミュージック×ボーカルで躍動的な歌声を披露している。「OASIS」は、JO1印と言ってよいだろう。複雑な展開を見せるトラックに巧みな歌唱が乗る。もはやこれが普通になってしまったのが恐ろしいが、絶妙に変化していくリズムに難なくボーカルを乗せていくスキル、並大抵の業ではない。「ゆらゆら揺れ My oa My oa my oa my oasis」の部分のメロディは、上昇していくハーモニーが多幸感にあふれていて最高。フューチャーベース風味の「We Alright」は、近未来的なビートの上で開放的なボーカルからラップへのスムーズな展開が見事。

■JO1ワールドのひとつの到達点/6TH SINGLE『MIDNIGHT SUN』(2022年10月12日発売)

サウンドのおもしろさとムード演出という点で、JO1のディスコグラフィの中でも最も刺激的なシングルではないだろうか。「夢と現実の間。このおかしな世界で、僕らはなんだってできる。」というコピーが掲げられたとおり、尋常ではないほどのエッジィかつ高品質なビートが、シアトリカルともいえるような奇天烈な世界観へと昇華されている。ダンスが話題を呼んだ「SuperCali」はまさしくその筆頭。「Phobia」も「16(Sixteen)」もどこか哀愁漂う旋律が印象的で、やはり確固たる世界観を確立している。「Rose」は、後半のビート展開が圧巻。トガったサウンドを鳴らすだけでなく、きちんとムードを打ち立てた点において、JO1ワールドのひとつの到達点。

■感性が大爆発した挑戦的な曲がズラリ/7TH SINGLE『TROPICAL NIGHT』(2023年4月5日発売)

どこまで飛ばすつもり!?と思わず叫んでしまうような、感性が大爆発しているシングルだ。『MIDNIGHT SUN』で打ち立てた実験性と世界観の両立をベースに、さらに音楽性を拡大させた挑戦的な曲が並ぶ。妖しい色気が充満している「Tiger」から始まり、「Trigger」は立体的なサウンドの中でここしかないというポジションにボーカルがバチバチとハマってクール。「Comma,」ではジャズの解釈にアプローチ。「Forever Here」は歌唱法や声色に新たな工夫が見られ、とにかく、それだけ手広く新境地を開拓しつつもすべてカッコよいというのがすごい。カッコよさの枠に収まり安住していくこともできるだろうに、安易にそれを選択しない、攻めの姿勢に惚れ惚れ。

■唯一無二のグループであることを証明/8TH SINGLE『HITCHHIKER』(2024年5月29日発売)

これまでも「STAY」や「RadioVision」といった曲で見せていた、JO1の得意ジャンルであるファンクにアプローチした曲が数多く並ぶ最新シングル。ファンクの現代解釈にストレートに挑んだ「Love seeker」から始まり、ファンクを基軸にロックサウンドに進化させた「Test Drive」、ファンキーなベースが最高にハッピーな「Sugar」、CNBLUEのジョン・ヨンファが作曲に参加したファンク・ポップ「Lemon Candy」など、得意技をさまざまな角度からさらに洗練してみせた。もともと歌唱力はすごいが、デビュー当初からさらにレベルアップしているからこそ、これだけのファンク解釈のバリエーションをこなせるようになったともいえるだろう。正真正銘、唯一無二のグループだ。