【レビュー】SixTONES「GONG」「ここに帰ってきて」に胸を揺さぶられる理由。対極的な世界観を共存させる歌唱力と表現力を象徴する作品

AI要約

SixTONESが13thシングル『GONG/ここに帰ってきて』の2曲を披露し、ファイトソングとラブソングの対照的な世界観を持つ作品であることを紹介

ファイトソング「GONG」は勇ましさのあるロックサウンドであり、儚げなラブソング「ここに帰ってきて」は繊細な世界観を持つ。両楽曲にはSixTONESの歌唱力や表現力が光る

記事に登場するメンバーの人間味溢れる一面や奮闘ぶり、各楽曲の特徴やMVについての詳細が述べられている

【レビュー】SixTONES「GONG」「ここに帰ってきて」に胸を揺さぶられる理由。対極的な世界観を共存させる歌唱力と表現力を象徴する作品

*高地優吾の「高」は「はしごだか」が正式表記

■ファイトソングとラブソング。双方向に振り切った世界観

7月12日放送『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演したばかりのSixTONES。番組で生披露したのは、SixTONES 13thシングル『GONG/ここに帰ってきて』の2曲。7月10日にリリースしたばかりの最新曲だ。

「GONG」はメンバーの田中樹が出演した日曜ドラマ『ACMA:GAME アクマゲーム』(日本テレビ系)の挿入歌として起用され、劇中で描かれたスリリングなシーンにマッチする、大きな壁に立ち向かう勇気をくれるファイトソング。一方、「ここに帰ってきて」はメンバーの京本大我が初の単独主演を務める映画『言えない秘密』の主題歌で、愛する人との別れ、過ごした時間を惜しみながらも大きな愛情と感謝の気持ちを持って前に進もうとするラブソング。両A面シングルに相応しく、堂々たる存在感を放つ。

勇ましいファイトソングと儚くも深い愛情を歌ったラブソングという、双方向に振り切った世界観の楽曲を1枚に共存させる、このコントラストと潔さはSixTONESならでは。彼らの歌唱力や表現力などSixTONESの技量と、パフォーマンスの奥深さを象徴するような作品だ。

■勇ましさのあるロックサウンド。6人の姿に滲む泥臭さと美しさが伝わる「GONG」

のっけから目の覚めるような映像とギターのリフで始まる「GONG」。ファイトソングらしく、リスナーを奮い立たせる、勇ましさのあるロックサウンドだ。MVでは大都市をはるか上空から映し出し、くるりと旋回しながらジェシーが立つビルの谷間へと着地。そこから始まるはジェシー、森本慎太郎、田中樹、高地優吾、松村北斗、京本大我の順に繋ぐマイクリレー。体をゆらりと揺らすなど余裕を見せるものの、その表情に笑顔はなく臨戦態勢。尖ったガナリ声が痛快に響く。そして6人の瞳に宿るは優しさと鋭さ。嵐の前の静けさを表すかのようだ。

Aメロから助走をつけるようにどんどんと加速し、サビ前にカメラがぐるりと回転するとその勢いはさらに増す。バトルを彷彿とさせる全身を使った躍動感溢れるダンスに、ステージではレザージャケット姿でガイコツマイクを握ってシャウト。ヘドバンしたり拳を突き上げたり、オーディエンスの熱気を浴びて気持ちよさそうに歌う6人。360度カメラが映し出すライブの解放感を味わったのも束の間、彼らは再び走り出す──。

一貫したアップテンポで、疾走感溢れるメロディからは、逆境や難局に立ち向かう勇ましさを感じると同時に、他人のペースにのまれまいと抗う姿勢や、自分や仲間を信じて突き進む勇気や強さも。“I’m a ruler.”と言い切るところからは、笑われたっていい、傍から見れば負け試合に見えてもまだ終わっちゃいない。最後までやり抜いて、そして最後に笑う──。サビの“暴れ出す”に入る前に“あ”を伸ばして歌詞へと繋げるのだが、腹の底から湧き出るような歌声がまさに“GONG”のよう。始まりのGONGも終了のGONGも自分が鳴らす、そんな並々ならぬ意思を感じるのだ。

「GONG」には真剣だからこそ放つ泥臭さと美しさがある。ドラマの世界観とリンクしたメッセージ性の高い歌詞と楽曲は、挿入歌としてヒリヒリとするシーンに馴染むと共に、この熱さに違和感がないのは、歌う6人の奮闘があるのも理由だろう。

SixTONESはライブパフォーマンスを筆頭に、ソロでも舞台やドラマ、映画と俳優として活躍する。ラジオやバラエティ番組でのトークでは笑いもとるし、時には体だって張る。6人が個性を発揮しながら、様々な場面で活躍しているのだ。

■様々な場面から伝わってくる人間味溢れる人柄や奮闘ぶり

一見するとクールで、アーティストらしいエピソードも持っている彼らだが──。バラエティ番組ではありとあらゆるギャグを飛ばして笑いをもたらすジェシーも、舞台などの仕事を前にすれば緊張することを告白したり、ギラリとしたゴールドアクセサリーが目を引く田中も実は人見知りだったり。ドラマの撮影現場でどう振舞っていいか分からないとラジオで明かしたほか、“友達が少ない”ことからその克服を目指す番組『あべこべ男子の待つ部屋で』(日本テレビ系)で、初対面のゲストを前にたじたじになりながらも奮闘する。松村は大好きなアーティストのライブに参加するために一般客と同様に自らチケットを取って向かったことをうれしそうにこと細かく語ったほか、京本も初めて一人で海外旅行に出かけたことや、秋葉原でコレクションしているものを買っていることを明かしたり、今年から年齢非公開にした高地は、トーク番組で自ら口を滑らせて出身地域を明かして、ナチュラルに笑いを取ったり。森本は自宅にミニ寸胴やフライヤー、オーダー家具などを購入と豪快なエピソードが飛び出す一方で、6月に誕生日を迎えたメンバー(ジェシー、田中、松村)のためにケーキを手作りする愛情たっぷりな一面も。そして、直近の仕事でいえば、松村や京本が出演した映画作品が海を渡り、森本は急遽決まったドラマ主演を引き受け、立派に座長を務め上げるなど…音楽活動以外での奮闘も枚挙に暇がない。

そんな彼らの発言や姿勢、様々な場面から伝わってくる人間味溢れる人柄や奮闘ぶり、仲間や周囲を思いやる姿勢は、ファイトソングを歌うに相応しいこの上ない説得力がある。「GONG」が熱い感情に満ちているのに、不思議と爽快感を纏って駆け抜けていくのは、そこに6人のリアルがあるからだろう。

■願えば願うほど遠のいてしまうような、繋いだ手が離れてしまうような…そんな儚げな印象を与える「ここに帰ってきて」

さっきまでの喧噪が嘘のように、みっちりとした熱気から一変。触れたら壊れてしまいそうな、透明感と儚げな世界観を放つガラス細工のような「ここに帰ってきて」。

一台のグランドピアノで奏でる少し悲し気な旋律に、柔らかいストリングスが重なる。ジェシーの丸みのある柔らかい歌唱から始まり、前に進みながらもふと寂しさが溢れてしまうような森本の歌声。愛する人と過ごした日々がありありと浮かぶように歌う京本。そして恋をしていたとストレートに歌う松村。田中と高地のハーモニーは、恋人たちの心の叫びのように響く。

儚なくも確かにあった本気の恋愛。叶わないと分かっていても願ってしまう、後悔も含んだ複雑な思いがありつつも、未練や哀愁に浸るだけでもない。ガラス細工のような繊細な歌声、ふたりで一緒に聴いた曲を耳にして、繋いだ手の温もりまでを思い出す、慈しみに満ちたシルキーな歌声を響かせる。後半からの高まりからは、出会えたことで強くなれたという感謝の気持ち、鍵盤とストリングスも相まって意思や芯の強さも感じる、絶妙なバランスだ。

中でも印象的なのが、“ここに帰ってきて”を3回繰り返すサビのパートだ。歌詞を映画のストーリーを踏襲した言葉を置いて変化をつけることもできただろうが、あえて音にアクセントをつけるに留めた印象だ。

同じフレーズを繰り返すことでインパクトが生まれ、曲調によっては中毒性を感じる濃厚な楽曲も少なくない。しかし「ここに帰ってきて」は、繰り返してもクドさを感じないどころか、願えば願うほど遠のいてしまうような、繋いだ手が離れてしまうような…そんな儚げな印象を与える。言葉を極力シンプルに、6人の感情を乗せた音色を通して表現することで、楽曲の世界観、映画の余韻が瑞々しく残る。

この思い切りの良さは、作詞・作曲が完全な分業ではなかったことも大きいのではないだろうか。そしてSixTONESの歌唱力と表現力に委ねようという意図も感じた。6人全員がそれぞれに感情を乗せ、まるで芝居をするかのように歌う。

MVでは白と薄っすらとスモークがかった儚げな雰囲気で、シンプルだからこそ6人の歌唱と表情が際立ち、白が生み出す余白は、映画を観た観客や楽曲を聴いたリスナーの感性によって色をつけるよう託されたようにも思える。

■繊細と豪快、喧噪と閑静というほどに対極的な世界観を打ち出したSixTONES

両A面シングルとして田中と京本の出演作を盛り上げる一方で、繊細と豪快、喧噪と閑静というほどに対極的な世界観を打ち出したSixTONES。今作では特に一人ひとりの歌唱パートが分かりやすく見えているのも特徴だ。繰り返しになるが、ここまでのコントラストが成立するのはSixTONESの歌唱力、表現力があってこそ。歴代シングルと比較してもかなりインパクトを与える作品だ。

シングルを聴いただけでも胸を揺さぶるのだから、この2曲を含めたライブではさらに強く心を動かされるだろう。今年は初の4大ドームツアーを4月に終えたばかりと、だいぶ気は早いがライブの開幕を知らせる“GONG”が鳴り響く日が待ち遠しい。

TEXT BY 柚月裕実

リリース情報

2024.7.10 ON SALE

SINGLE「GONG/ここに帰ってきて」