『虎に翼』三山凌輝の“温かさ”はまるで陽だまりのよう 直明だから気づける我慢の痛み

AI要約

寅子が家庭と仕事のバランスを取る難しさに直面しながらも、不穏な空気が猪爪家に流れ始める。

直明の穏やかで純粋な存在が猪爪家や視聴者をサポートし、家族間の微妙な関係に光を当てる。

直明の内面や行動が変化し、寅子との衝突が迫りつつある中、展開に期待が高まっている。

『虎に翼』三山凌輝の“温かさ”はまるで陽だまりのよう 直明だから気づける我慢の痛み

 寅子(伊藤沙莉)が社会で活躍する新時代の女性の代表格として注目を浴び、対外的な発信がどんどん増えていく中、猪爪家には不穏な空気が流れ始める『虎に翼』(NHK総合)第15週。

 家事だけでなく優未(竹澤咲子)の面倒も花江(森田望智)に任せっきりで、忙しさにかまけて家庭を顧みないながらも一家の大黒柱然と振る舞う寅子。自分自身がまさか旧来的な男性のような言動をしてしまい、周囲を“スンッ”とさせてしまっていることにまるで無自覚だ。この違和感の中、それに全く気付いていない寅子の様子についに花江の堪忍袋の緒も切れそうだが、そこでバランサーとしての役割を果たすことになりそうなのが弟・直明(三山凌輝)だ。

 直明役を演じる三山は本作が朝ドラ初出演。BE:FIRST RYOKIとしてのアーティスト活動と並行して役者としての活躍もめざましい。

 キラキラとした三山の瞳には、優しく控えめな直明の性格が自然と滲み出ており、その純度の高い存在感に猪爪家も視聴者もこれまでも度々助けられてきた。

 終戦後に進学先の岡山から帰ってきた直明の登場時から、甥っ子、姪っ子たちに囲まれ子どもたちに慕われながら過ごす直明の姿には「日常」が宿り、あの穏やかさには家族がどんどん減ってしまう局面でも大いに救われた。

 裏表がなく、相手から発せられる言葉をそのまま受け取るのと同様に、直明からの言葉にも嘘偽りがない。家庭裁判所の発足の障壁となっていたキーパーソン2人の説得を直明が事もなげに成し遂げてしまうのにも頷ける。奇をてらわずに正攻法で困難を乗り越えられる直明は『北風と太陽』で言えば紛れもなく“太陽”側で、彼がいるだけでそこが陽だまりになってしまうような健やかさと純真さ、温かさと人間味がある。

 敢えて茨の道を突き進み、今や「より良くあろうとする」ことに何の疑問も抱いていないエネルギッシュな寅子の前で、子どもたちが“お利口さんでいるように”なってしまうのも納得だが、自分の夢を我慢して家族の夢や幸せを優先しようとする直明には優未の気持ちが痛いほどにわかってしまうのだろう。寅子に甘えたい気持ちよりも、母親に「お利口」と褒められることを優先している優未の姿を心配そうに眺める直明の曇りなき眼が印象的だ。

 自分が何かを譲ったり差し出す分には惜しげもない直明だが、誰かの我慢には敏感なのかもしれない。“自分のために”という動機は弱くとも、“人のために”となれば看過できないことが出てくる直明に訪れているだろう変化を見逃さないようにしたい。

 そしてこれまで寅子のことは基本的に全肯定だった直明が、優未の気持ちを代弁したり、猪爪家のために物申すシーンが控えているようで、直明だけでなく寅子にとっても一皮剥けることになるだろうその瞬間を楽しみに待ちたい。