43年ぶりに復活!! 『裏表太閤記』に松本幸四郎&市川染五郎親子が挑む!

AI要約

7月歌舞伎座で上演される『裏表太閤記』に出演する松本幸四郎さんと息子の市川染五郎さんを紹介。1981年初演の作品を43年ぶりに復活させ、幸四郎さんが秀吉、孫悟空、重成の3役、染五郎さんが孫市、秀家の2役を演じる。物語は秀吉と明智光秀の対立を描き、幻想的な要素も盛り込まれている。

役者たちは熱い芝居で暑い夏を吹き飛ばす意気込み。幸四郎さんは演出に古典的な要素を取り入れ、染五郎さんは役作りに情緒を込め、観客を楽しませる作品を目指している。

舞台には本水を使った立廻りや宙乗りなどの演出があり、視覚的にも楽しめる。幸四郎さんと染五郎さんが共演し、熱い芝居を届けることに期待が高まっている。

43年ぶりに復活!! 『裏表太閤記』に松本幸四郎&市川染五郎親子が挑む!

バイラの連載「歌舞伎沼への誘い」。今月紹介するのは、7月歌舞伎座で上演される『裏表太閤記』に出演する松本幸四郎さんと息子の市川染五郎さん。1981年に二世市川猿翁が初演した作品を43年ぶりに復活させます。宙乗りや本水を使った立廻りなど、歌舞伎の面白さがぎゅぎゅっと凝縮された本作は、暑い夏をさらに熱く盛り上げてくれること間違いなし。

古典から新作まで幅広く活躍し、情熱あふれる芝居で心を揺さぶる幸四郎さん、麗しい容姿と真摯な芸で若手の中でも頭角を現しつつある染五郎さん。そんな二人がこの作品にどう挑むのか、バイラ歌舞伎部のまんぼう部長とばったり小僧が深掘りします!!

■夏の暑さを熱い芝居で吹き飛ばしたい!

まんぼう部長: 7月の歌舞伎座で上演される『裏表太閤記』は、昨年亡くなられた市川猿翁さんが1981年に初演した新作で、それ以来、なんと43年ぶりの上演なんですね。

幸四郎: 当時の舞台を僕は生では観ていないんですけれど、猿翁のおじさまが昼夜通しの新作を作られたことは、本当にとんでもないスケール、エネルギーだと思います。その熱量は受け継ぎつつ、今の時代のお客さまに届くような作品を新たに作り上げることができたらと思っています。

染五郎: 初演のときとは設定やストーリーも少し変わって、ぎゅっとコンパクトにはなりますけれど、父が言うように熱さはそのままに上演されると思いますので、それについていけるように頑張りたいです。

ばったり小僧: 「太閤記」といえぱ、一般的には豊臣秀吉の一代記のことを言いますけれど、今回はそれに“裏表”とついています。

幸四郎: そうですね。秀吉は若くして織田信長に仕えて、そこから天下をとるまで上り詰めていきました。そんな秀吉のサクセスストーリーが「表」だとすると、「裏」はライバルの明智光秀たちの悲劇を描いた物語になります。秀吉と光秀という二人が柱となって展開されるドラマなので、輝かしい光の部分と影の魅力とのコントラストをいかに明確に見せていくか、というところが大事になってくると思います。

部長: 幸四郎さんは、主人公の秀吉、そして鈴木喜多頭重成、さらに孫悟空の3役を演じます。秀吉と孫悟空って、えっ、どういうストーリー展開??って感じですが。

幸四郎: 今回三幕の構成になっていて、それぞれ色が違うんです。序幕では光秀の物語が描かれていて、二幕目では秀吉と光秀の大滝での立廻りが見どころになります。三幕目の大詰、孫悟空が登場する『西遊記』の場面は、ファンタジーの要素が強くて、重厚なお芝居の中のひとつの彩りとして作られた場面だと思います。

初演のとき、ちょうど中国の京劇が日本で公演をしていて、それをご覧になった猿翁のおじさまが影響を受けて作られたと聞いていますが、踊りもありますし、トリッキーな演出もあって、華やかな色合いを持った場面になります。

小僧: 染五郎さんは、幸四郎さん演じる鈴木喜多頭重成の息子・鈴木孫市と、宇喜多秀家の2役ですね。

染五郎: 孫市の役について言うと、主君に対する忠誠心を貫く、とてもまっすぐな性格です。父親の重成が主君に背いて秀吉に寝返ろうとしたときも、「それでは反逆者だ」と、たとえ父であっても斬りかかろうとするんですね。そういうしっかりとした自分を持っているところを出せていけたらいいなと思っています。

昭和に作られた新作ですが、演出は古典的なもので、セリフのテンポやセリフ回しなど、義太夫狂言にどう感情を乗せていったらいいか、研究して作っていきたいです。

小僧: 染五郎さんも孫市のように、幸四郎さんに「それは間違っている!」って意見するタイプですか。

染五郎: いや、どうだろう?(幸四郎さんを見る)

幸四郎: まあ、我が家の場合、だいたい僕のほうが間違ってるからね(笑)。

部長: 今回、明智光秀は尾上松也さんが演じられます。松也さんの光秀との対決シーン、とっても楽しみなのですが、幸四郎さんからご覧になって、松也さんはどんなかたですか。

幸四郎: 歌舞伎にはセリフ回しや型というものがありますけれど、その上で、役というものを自分の中に落とし込んで演じるというのをすごく感じる役者さんなので、一緒に芝居をしていてとても楽しいですね。

染五郎: 僕はお芝居でちゃんとご一緒するのは初めてなんですけれど、いろいろ拝見していて、とても熱いかただと思うので、今回、色々勉強させていただければと思います。

幸四郎: とにかく本水を使った立廻りあり、宙乗りあり、様々な仕掛けがあって、視覚的にも楽しんでいただける作品なので、歌舞伎初心者のかたにもぜひ観ていただきたいですね。

染五郎: 熱さで暑さを吹き飛ばすような作品にしたいと思っていますので、ぜひそれを体感しに来ていただきたいと思います。

幸四郎: 7月の歌舞伎座は、昼の部が(市川)團十郎さんの通し狂言で、夜が『裏表太閤記』で通し狂言対決なんですけれど、「絶対にこっちが面白い!」という気持ちでやりたいです。お互い、そういう思いを持ってやるのが健全じゃないかと。

とはいえ、向こうは13役で、こっちは3役だから、ちょっと分が悪い。野球だったらコールドゲームですからね(笑)。どうやったら太刀打ちできるのか、みんなで知恵を出しあって、すごいものを作り上げたいです!

取材・構成/バイラ歌舞伎部 写真/露木聡子

まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。 

ばったり小僧……やる気はあるが知識は乏しい新入部員。若いイケメン俳優だけでなく、オーバー40歳の熟年俳優も大好き。