唐沢寿明「これが好き、だから側に置いておきたい」たくさんのものを手にしてきた今、たどり着いた究極の願いとは

AI要約

16歳で芸能界デビューから現在までのキャリアを振り返る唐沢寿明。苦労や夢、時代の変化を語る。

好きなものを所有し、人のために活動する幸せを感じる唐沢寿明。車や高級品よりも意義あることへの関心が強い。

唐沢寿明は東日本大震災の復興支援を行うチャリティイベントを通じて、人のために尽力している。

唐沢寿明「これが好き、だから側に置いておきたい」たくさんのものを手にしてきた今、たどり着いた究極の願いとは

 16歳で芸能界に足を踏み入れた唐沢寿明のプロフィールは、THE CHANGEに満ちている。『仮面ライダー』シリーズなどのスーツアクターを経て、ミュージカル『ボーイズレビュー・ステイゴールド』でデビュー。NHK朝の連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』、大河ドラマ『春日局』(NHK)で注目を集め、『愛という名のもとに』(フジテレビ系)でブレイク。以来、代表作を並べるだけでページが埋まってしまうほどのキャリアを重ねてきた。最新作の映画『九十歳。何がめでたい』で、昭和気質満載の編集者を演じる唐沢のTHE CHANGEとは──。【第3回/全4回】

 唐沢寿明が俳優として歩み出した1980年代後半は、日本がバブル景気に向かっていて、誰もが元気で明るい未来を夢見ていた。その時代を経験した唐沢から、現代はどのように見えるのだろう。

「ばくは、俳優としてある程度食べていけるようになるまで本当にお金がなくて、高価なもの……車とか欲しいとも思わなかったよね。だって、どう頑張ったって買えないのに、欲しかったらつらいだけじゃない」

 同世代がブランド物のスーツに身を包み、競って高級車を乗り回していたころ、唐沢は怪人のスーツの中で汗だくになり、さまざまなアルバイトに駆け回っていた。

「だからこそ、やっと自分の車を手に入れたときは嬉しかった。当時はマニュアル車だから、エンストすると女の子からへたくそ!ってバカにされるんだよ。必死で練習したよね。女の子に好かれたくて(笑)」

 時代は変わり、車に憧れを抱く若者は激減。車は買うものから必要なときだけ借りるものになった。

「ぼくは、車も服も時計も、自分のライフスタイルの一部だと思っているから。別に高い物じゃなくてもいいんだよ、自分はこれが好き。だから側に置いておきたいと思うから手に入れるわけで、どうしてそれを他人とシェアするのか、よくわからない」

──好きなものを所有して、愛着を持って使うのが幸せ?

「だってそうでしょ? 人間って、常に好きか、嫌いかを基準に行動していると思うんだよ。好きな人とは一緒にいたいけど、嫌いな人とはできるだけしゃべりたくない。家の中に嫌いな物があったら居心地が悪い。人間って、その程度の生き物なの。だから好きな人とだけ付き合って、好きな仕事をしていられたら、それが一番幸せだと思うね。難しいことだけど」

──キャリアを重ね、欲しいものが自由に買えるようになったいま、一番欲しいものは?

「さっき車の話をしたのに、こんなことを言うのは矛盾しているかもしれないけど、昔からあれが欲しい、これが欲しいっていうのはあんまりなくて。いまは人のために何かをしたいという気持ちが強いですね」

 唐沢は2019年から東日本大震災で被災した東北の復興支援を目的としたチャリティ・クラシックカーラリー・イベント『GO! GO!ラリー in東北~Classic car meeting~』を開催し、妻の山口智子と共に愛車で被災地をまわっている。今年4月には、2016年の地震で大きな被害があった熊本市を訪れ、全国から集まったクラシックカー約100台と被災地を駆け抜けた。自分のためよりも、人のために。 俳優としても唐沢寿明のなかには、常にその思いがあるという──。

唐沢寿明(からさわ・としあき)

1963年6月3日生まれ、東京都出身。’87年に舞台『ボーイズレビュー・ステイゴールド』でデビューし、映画、テレビドラマで活躍。主な出演作は、大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語』(NHK)、『白い巨塔』(フジテレビ系)、『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS)、『フィクサー』シリーズ(WOWOW)、映画『ラヂオの時間』、『20世紀少年』シリーズなど。声優としてはアニメ映画『トイストーリー』シリーズでウッディの声を務める。

工藤菊香