開高健の新たな直筆原稿を発見…釣りへの愛、ユーモアたっぷり

AI要約

ベトナム戦争を題材にした作家・開高健の手書き原稿が見つかり、趣味の釣りについて熱く語っている。

原稿は釣り具会社のPRポスター用に書かれたもので、釣りの楽しさや魚の増加について述べられている。

直筆原稿が見つかることの珍しさや開高らしいユニークなエッセー内容についても触れられている。

 ベトナム戦争を題材にした「輝ける闇」や釣りの紀行で知られる作家・開高健(かいこうたけし)(1930~89年)の手書きの原稿が今年、見つかった。趣味だった釣りの魅力を、丸みを帯びた文字で記している。開高作品の著作権を管理する公益財団法人開高健記念会(東京)は「新たな直筆が見つかるのは珍しい」としている。(中谷和義)

 原稿は400字詰めの用紙6枚。1979年、開高と親交のあった釣り仲間が群馬県桐生市で釣り具会社を始めることになり、会社のPRポスターに掲載するために書いた。

 原稿では、最近の魚が少なく小さくなったと嘆く一方、魚は1回におびただしい卵を産み、川や湖の管理もそれほど費用がかからないとして、釣りがハンティングのように禁止されていないことが「たった一つの救いである」と記す。そのうえで「ブラウン(ブラウントラウト)の散らす水のダイヤモンド粒を頭から浴びてオシッコをちびりそうになる。瞬間。この瞬間。」と、釣りの醍醐(だいご)味を独特の表現で訴え、「そして穴場は人に教えるな。(よほど告白したくなったら私にだけ)」と、ちゃめっ気たっぷりに結んでいる。

 ポスターには釣り具の写真などとともに全文が掲載され、制作に携わった東京都内のグラフィックデザイナーの男性が原稿も保管していた。今年1月、知人のつてで存在を知った出版社「つり人社」(東京)の編集者、小野弘さん(58)が男性から実物を見せてもらい、記念会に照会。原稿は、同社が今月27日に発売したムック本「オールドタックルアングラーズ」(税込み2420円)に掲載された。

 記念会の森敬子理事によると、開高は書き損じの原稿を捨てていたため、直筆が見つかるのは珍しいという。森さんは「思わず笑ってしまう内容の中に、釣りへの愛が込められている。いかにも開高らしいエッセーだ」と話す。小野さんは「釣り場の縁が生んだ『開高ワールド』を楽しんでほしい」と語った。