中国大使「火の中」発言、「日本人ぶっ殺す」と言ったも同然 外相抗議を 山上・前豪大使

AI要約

中国の呉江浩駐日大使が台湾問題で、日本が中国分断に加担すれば「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と表現し、山上信吾・前駐オーストラリア大使が批判。中国の動きを増長させる恐れを警告。

大使の発言が日本人一般に向けられている点で異例。中国は台湾問題で過敏になり、「一つの中国」原則の解釈を狭めつつある。日本政府への譲歩を迫っている。

日本政府は、大使の発言に直接抗議すべきだが、外交ルートのみで対処。2008年の日中韓サミット直前に中国が反応を試す事例が重なる。

中国大使「火の中」発言、「日本人ぶっ殺す」と言ったも同然 外相抗議を 山上・前豪大使

中国外交をめぐる論客、山上信吾・前駐オーストラリア大使が30日、産経新聞の電話インタビューに応じた。中国の呉江浩駐日大使が台湾問題で、日本が中国分断に加担すれば「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と述べたことについて、「日本人をぶっ殺す、という意味に等しい」と批判した。摩擦を嫌う日本政府の姿勢が、中国の動きを増長させると警鐘を鳴らした。

ー「火の中」発言について

「火」は台湾独立を阻止するための中国の武力行使を指す。発言は、それに日本人が巻き込まれて殺されるという意味だ。戦火を経験した日本人は東京大空襲や広島、長崎の原爆を想起する。大使は日本人に与える意味合いを十分認識しながら、元首相やメディアの前であえて扇情的な言葉を使った。そこに問題の深さを感じる。

中国外交官が問題発言をした例は過去にもあるが、今回は、発言が日本人一般に向けられている点で大きく異なる。駐日大使が「日本人をぶっ殺す」と言うなど、ありえない。看過してはいけない。

■2008年日中韓サミット前にも

ーこの発言の真意は

中国は台湾の頼清徳総統を独立派とみて過敏になっており、「一つの中国」原則の解釈を一歩一歩狭めている。大使は日本の国会議員が総統就任式に出席したことを問題視したが、台湾と非政府間の実務関係を維持することは、1972年の日中共同声明以来、認められてきた。議員は政府代表ではないから、訪台に問題はないはずだ。日本に対するハードルを釣りあげ、譲歩を迫っている。

ー日本の対応について

外相か外務次官が大使を呼び出し、直接抗議すべきだ。それが世界の外交では常識なのに、政府は「外交ルートの抗議」で済ませた。ソウルで27日に日中韓サミットが開かれる直前だったから、中国の機嫌を損ねたくなかったのだろう。

私が危惧するのは、福岡県で2008年12月、初の日中韓サミットが開かれたときと状況が重なるからだ。

このときはサミットの5日前、中国が初めて海洋調査船を尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の日本領海に送った。「日本はサミットを壊したくないから、文句を言わないだろう」と見て、反応を試した。