那須雪崩8人死亡は「人災」、涙する遺族「学校の安全に警鐘を鳴らす判決だ」

AI要約

栃木県那須町で2017年に発生した雪崩事故に関する宇都宮地裁の判決について、遺族は教訓として捉えた。

裁判所は引率教諭らの重大な過失を指摘し、実刑判決を言い渡した。

遺族は被告らに真摯に向き合い、再発の防止を求めている。

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習を受けていた高校生ら8人が雪崩で命を落とした事故について、宇都宮地裁は30日、引率教諭ら3人が安全確保などを怠った「人災」と結論づけた。大切な家族を亡くした遺族らは記者会見を開き、禁錮2年の実刑判決に、「学校の安全に警鐘を鳴らす判決だ」と話し、教育活動での教訓とするよう訴えた。

 「安全措置をとらずに無謀なことをするのは罪だと認めてもらった」。同地裁の判決後、栃木県庁で行われた遺族の記者会見で、県立大田原高校1年だった長男公輝(まさき)さん(当時16歳)を亡くした父・奥勝さん(52)は涙ながらに振り返った。

 奥さんは遺族の先頭に立ち、引率教諭らの過失や再発防止策の重要性について訴え続けてきた。公判では、被害者参加制度を利用した意見陳述の場で、実刑判決を求めていた。

 雪崩事故について、同地裁は「(被告らの)相当に重い不注意による人災」と断じ、実刑を言い渡した。奥さんは、「私たちには当然の結果だが、学校の安全に対する教訓にならなければならない」と訴えた。

 これまでの公判で、登山の講習会の統括役だった猪瀬修一被告(57)が「改めておわびします」と深々と頭を下げるなど、3被告は謝罪の意思を示した。しかし具体的な過失を認めることはなく、無罪を主張し、逆に、「生徒が指示に従わなかったとも受け取られかねない不合理な弁解」(地裁判決)で遺族の気持ちを逆なでした。

 同校1年だった次男の淳生(あつき)さん(当時16歳)の母・高瀬晶子さん(57)は「(被告らには)判決を真摯(しんし)に受け止めて、事故と亡くなった8人と向き合ってほしい」と語った。

 突然の悲報で次男を亡くしてから5年近くがたった2022年2月。検察官から3教諭の在宅起訴が決まったと電話で連絡を受けた。自然と涙が流れた。

 公判で3被告が事故当時について語る言葉に納得できず、「ここまできても事故と向き合うことができないのか」と悲しさとむなしさがこみ上げたが、この日は裁判長が主文を読み上げた後、ピンク色のハンカチで目頭を押さえた。「訴えてきたことをきちんと聞いてくれていた」。安堵(あんど)感をにじませた。

 事故で犠牲になった同校1年の長男宏祐さん(当時16歳)の父・佐藤政充さん(55)は、「今日の日を迎えるまで、すごく長く感じ、毎日苦しんできた」と振り返った。「裁判所からも人災という言葉が出た。教育界にとっても大きなものになる。こういう事故がないように受け止めてもらいたい」と語った。