やせて太って…大学生活に悩んだ20歳の夏、自転車一人旅に救われた “恩人”と手紙のやりとり続け、27年ぶりに再会

AI要約

20歳の頃に東京から自転車で実家まで帰省した会社員が、その体験を紙芝居にして町の学校で読み聞かせを行っている。

旅の途中で出会った藤原さんと27年ぶりに再会を果たし、旅の思い出を語り合う。

佐々木さんは挑戦する大切さや自分を信じることを伝えながら、学校を回っている。

やせて太って…大学生活に悩んだ20歳の夏、自転車一人旅に救われた “恩人”と手紙のやりとり続け、27年ぶりに再会

 長野県南佐久郡佐久穂町畑の会社員佐々木理那さん(46)が、20歳の時に住んでいた東京都立川市から旧八千穂村(現佐久穂町)の実家までの約174キロを自転車で帰省した体験を紙芝居にした。3年ほど前から町内の小中学校で読み聞かせており、21日の佐久穂中3年3組での回には、旅の途中で出会った藤原正子さん(山梨県甲斐市)を初めて招いた。27年ぶりに“恩人”と再会を果たし、旅の思い出を語り合った。

 佐々木さんは当時、東京女子体育大(東京)で高校から続ける陸上の長距離種目に打ち込んでいた。「結果を残したい」と、52キロあった体重を43キロまで急激に落とした。その後数カ月は過食気味になり、ダイエットを続けた。次第に走れなくなり、走ること自体も嫌になったという。

 そんな時、友人が自転車で帰省した話を聞いた。「自分もやり切ったら何か変わるかもしれない」と、2年生の夏休みに自転車の旅に出た。午前4時半、マウンテンバイクに乗り、立川市を出発。都内の八王子市、山梨県韮崎市などを通って実家を目指した。

 同県甲斐市のコンビニで休んでいたところ、同世代の息子がいた藤原さんと出会った。藤原さんは「(自転車の旅の)話を聞いてびっくりした。飲み物と少しお小遣いを持たせたけれど、その後も心配で…」と振り返る。

 佐々木さんは約14時間かけて、その日の夜に無事、実家にたどり着いた。「また東京でやっていける」と確信。「大学の練習も旅のことを思い出すと、『こんなの何でもないや』と思えた」という。後日、藤原さんにお礼の手紙を書き、交流を続けてきた。

 佐々木さんは、町内のボランティア団体に所属。藤原さんや、暗いトンネルを抜けるために自転車を荷台に積んで運んでくれたトラック運転手らとの出会いを紙芝居にまとめた。学校を回り、挑戦する大切さなどを伝えている。

 この日も「やりたいことを諦めないでほしい。思いがけずふさぎ込むこともあると思うけれど、最後に頑張るのは自分自身」と生徒に語りかけた。藤原さんは「当時は佐々木さんがもっと小さく見えた。27年たってやっと会えた」と喜んだ。

 読み聞かせを聞いた黒沢雛香(ひなか)さん(14)は「自転車で東京から来るなんてすごい。藤原さんも優しくて心が温かい」。小谷野心(はな)さん(14)は「旅でいろんな人に出会った話を聞いて感動した」と目を潤ませた。