AIを利用した創作物、発明者は「人間」…政府が知的財産計画で見解明記へ

AI要約

政府の知的財産戦略本部が「知的財産推進計画2024」の原案をまとめた。その中で、創作物にAIを利用しても人間を「発明者」とするべきだとの見解が示された。

現在のAIの技術水準では、AIが自律的に創作活動を行っていることは確認できず、自然人の発明者を認定すべきだと述べられた。

また、俳優や声優らの声についても考え方を整理し、生成AIによる権利侵害への対処方針を模索することが盛り込まれた。

 政府の知的財産戦略本部(本部長・岸田首相)が近くまとめる「知的財産推進計画2024」の原案が判明した。創作物にAI(人工知能)を利用したとしても、人間を「発明者」とするべきだとの見解を明記した。現在の不正競争防止法で保護されていない俳優や声優らの声について、考え方を整理することも盛り込んだ。

 原案は、現在のAIの技術水準では「AI自身が、人間の関与を離れ、自律的に創作活動を行っている事実は確認できない」と指摘し、「自然人の発明者を認定すべきだ」とした。

 同様の見解は、司法の場でも示されている。東京地裁は今月16日、AIを発明者とする特許出願を特許庁が却下したのは違法だとして、米国人の技術者が国を相手取って却下処分の取り消しを求めた訴訟で、「特許法が規定する『発明者』は自然人に限られる」として請求を棄却した。

 一方、原案では、AI技術の急速な発展で自律的に発明の特徴的な部分を完成させることが可能となった場合に備え、発明の保護のあり方に関し「技術の進展や国際動向、ニーズを踏まえながら検討を進める」とも記した。

 俳優や声優らの声を巡っては、似せた音声が生成AIで作成されてSNS上などで流れる事例があり、権利侵害が指摘されている。原案では、生成AIが俳優らの声を利用・生成した場合の扱いについて「考え方の整理を行う」とした。

 生成AIと著作権については、文化庁文化審議会の小委員会が3月に公表した著作権法の解釈の明確化を図る「考え方」の「周知啓発を行う」とするにとどめ、著作権法改正には踏み込まなかった。

 アニメなどのネット上の違法配信などへの対策では、「厳正な水際取り締まりの強化も推進する必要がある」と強調し、国際的な捜査協力を推進する方針を盛り込んだ。また、技術開発の進展により国際的な新規市場が相次いで生まれる中、国際ルール形成に政府が積極的に関与する必要があるとして、「国家標準戦略」を策定し、推進体制の整備を図る考えを示した。