財務省が引用しない「IMFのデータ」も…「国の債務」は「プロパガンダ」にまみれている

AI要約

先週のコラムで取り上げた財務省の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」について、財務省のプロパガンダが強いことに触れた。

「国の借金」についての誤解や議論について記述し、政府のバランスシート作成や不良債権問題に携わってきた経験に触れた。

30年以上にわたる経験を通じて、政府の破綻の可能性をポイントとして捉えている。

財務省が引用しない「IMFのデータ」も…「国の債務」は「プロパガンダ」にまみれている

 先週の「現代ビジネス」コラム〈マスコミが鵜呑みにし続けている財務省の「ヤバい言い分」…「財政が厳しい」は相変わらず大ウソだ〉で、財務省が公表している「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」を取り上げた。

 その中で、それは「大した問題」ではなく、財務省はもっと先を見て悪質なプロパガンダを仕掛けていると書いた。しかし、もう少し説明が必要だったのかもしれない。

 〈債務残高が大きくなると財政状況が厳しいというなら、金融機関の預金残高の大きなところも財政状況が厳しいと言わなければならない。ベスト5をいえば、ゆうちょ銀行195.0兆円、三菱UFJ銀行192.3兆円、三井住友銀行149.9兆円、みずほ銀行145.2兆円、JAバンク108.6兆円だが、財政状況が厳しいなんて話はまったくない。

 それもそのはず、債務が大きいことは財政状況に直結せず、バランスシートで資産との大小でみなければいけないからだ〉

 と簡単に書いたが、あまり理解されなかったようだ。それほど、財務省やマスコミのプロパガンダが強いということだろう。これはまさに財務省の立場を代弁しているようなものだ。

 逆に、財務省の発表文について、間違った理解をもとに批判する人もいた。いずれにしても、双方ともに正しく理解できていないのは残念だ。

 後者の「財務省のプロパガンダに染まっていないが、間違った理解の仕方」というのは、NHKなどマスコミの報道した「国の借金、1297兆円余」に反応したようだ。「借金」があるのは「国」ではなく「政府」だろう、と。

 この種の言いがかりは、流石にマスコミも慣れており、報道の中身では「国債や借入金などをあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”」と書いている。正確には国ではなく政府の債務であるが、そういったところで、政府の債務が問題であるとの財務省の主張に対した反論にならない。

 また「政府の負債は国民の資産なのだから、目くじらを立てるな」という意見もあった。これは、誰かの負債は誰かの資産であり、常に真実であるが、これを言ったところで何の役にもならない。破綻企業の債務は、債権者の資産であるが、本当に破綻したら、破綻企業の負債も債権者の資産もパーになってしまう。

 つまり、政府が本当に破綻するかどうかがポイントであることがわかるだろう。

 筆者は、この問題を大蔵省官僚時代から手がけており、狭義の政府及び広義の政府のバランスシートを作ってから、もう30年くらいになる。政府のバランスシートを作成する前には、日本経済が不良債権問題に悩んでいたので、金融検査官「不良債権償却大魔王」として、金融機関やその取引先のバランスシートを作って「破綻認定」の実務を行った経験もある。

 政府等のバランスシートを作成後、国際機関や海外政府にも出張し、公会計に基づく政府などのバランスシート作成を勧めてきた。その間、大蔵省内、国内識者(多くは大蔵省内の人に唆された人たち)に無理解、批判があったのは知っている。幸いにも、海外政府や国際機関ではそうした批判はなく、素直に受け入れられた。