性犯罪者になったK-POPスターを一途に推してしまっていた…愛したファンを襲った理不尽な罪悪感

AI要約

22歳の映画監督がかつて推していたK-POPスターが性犯罪者となり、感じる複雑な気持ちを綴る。

映画監督は懲役刑の判決に疑問を持ちながらも、自らの制作に対する葛藤や現代社会への違和感を抱えている。

スターたちが犯罪行為を犯す度に、ファンや社会が直面する苦悩と衝撃についても述べられている。

22歳の映画監督オ・セヨン氏が、10代の青春をかけて推した元・K-POPスターは、ある日性犯罪者となった。デビュー作の映画をつくりながら、大好きだったあの人に「オッパ、なぜあんなことをしたんですか。どうして今、拘置所にいるのでしょうか。わたしはソウルの大学に進学して、映画を勉強しています。そう伝えたかった」という――。

 ※本稿は、オ・セヨン著、桑畑優香訳『成功したオタク日記』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

■ファン歴は5年、推しの懲役は6年

 罪なき罪悪感(2020.04.18)

 『成功したオタク』という映画の企画書を書きはじめたのは2019年5月だから、ほぼ1年が経った。いろいろなことがあり、20回近く撮影をしたが、まだ撮影すべきものも、解決されていない悩みもたくさんある。

 この1年のあいだに、「n番部屋事件」が表面化した。チョン・ジュニョンは性売買斡旋の容疑でも罰金100万ウォンの略式命令を受けた。100万ウォン。最近わたしは家庭教師をして毎月250万ウォンを稼いでいる。100万ウォンは、あの人が自分の過ちを認めるに値する金額だろうか。いや、そうではないだろう。本当にもどかしい。現在裁判が進行中なので様子を見たいが、第1審では懲役6年の判決が言い渡された。それ以上長くなる可能性はあるのだろうか。いや、ないだろう。

 コンサートやサイン会の現場でたびたび一緒になって顔を覚えたウンビンはファン歴7年だという。わたしはファン歴約5年。チョン・ジュニョンが6年、あるいはもっと短いあいだだけ服役して出所すればいいなんて。おかしな話だ。

 映画をつくりながら、誰も傷つけたくないと思った。誰かを責めたりからかったりはしたくないと。相手が犯罪者だとしても、毎日わたしが新聞を読みながら「クソ野郎」「カス野郎」と悪態をついていても、映画で罵倒してはいけないと思った。そういうことを言いたくてつくる映画ではないからだ。しかし最近は、その考えが正しいのか、よくわからない。勇敢な人たちが身の危険を冒して、自分のため、女性のため、よりよい世の中のために声を上げているなかで、この映画は時代遅れではないだろうか。車のギアをニュートラルの位置にすると後ずさりするというが、わたしはギアをニュートラルに入れているのかもしれない。だとすれば、怖いことだ。

■スターが10人、20人と犯罪者に名を連ねた

 大衆にイメージを売って生きるスターたちが、ひとりふたりどころか、10人、20人と新聞の社会面をにぎわせる。「罪を犯した」「性犯罪の加害者」「グループチャットをつくって女性に性的暴行を加え、売春もセクハラも、ありとあらゆる悪事を働いた」と。

 正直、とてもつらかった。だって、裁判所の入り口でフラッシュを浴びなかったら一生見ることもなかった「博士」(メッセージアプリのチャットルーム「博士部屋」で児童・青少年を脅迫して作成したわいせつ物を流布した容疑などで起訴された、チョ・ジュビンのこと。2021年10月、韓国最高裁判所で懲役42年の刑が確定した)と、青春の半分をともにしたチョン・ジュニョンを同じように受け止めることはできない。だから、苦しかった。

 チョン・ジュニョンのファンたちは、彼の美しい人生を信じ込んでいたのが痛々しい。これまでのつくられたイメージの裏に素顔が隠れていただけだとしても、すぐには受け入れがたい。わたしは、やるせない気持ちでいっぱいだ。わたしがあなたを好きだった理由がまやかしだったとは思いたくないけれど、あなたのすべてが否定されている状況で、何を信じ、何を選ぶべきか判断できないから。本当に、苦しくてつらい。