SNSの儲け話で500万円を失った男性 「9割は疑っていたのに」

AI要約

スマートフォンを通じてSNSを通じた仮想通貨の売買で500万円をだまし取られた男性会社員の体験

男性が詳細な経緯を語り、新幹線で来る相手の代わりに若いアジア系男性が現れ、被害に遭う

最終的に500万円を取られた男性が「SNSでのもうけ話は絶対に信用してはいけない」と警鐘を鳴らす

SNSの儲け話で500万円を失った男性 「9割は疑っていたのに」

 【岩手】スマートフォンの画面を見ると、あるはずの暗号資産(仮想通貨)が消えていた。「心の中でやられたんだなと思っても、幻なのか、現実なのか、わからない心境だった」――。SNSを通じた仮想通貨の売買で、4月に約500万円をだまし取られた盛岡市に住む30代の男性会社員が心境や経緯について取材に応じた。

 男性は2019年ごろから投資をテーマにしたLINEのオープンチャットを利用していた。友だちでなくてもやりとりでき、数百人程度参加していた。その中で、現金と仮想通貨の交換で手数料3%を上乗せするという内容の投稿を見つけた。4月12日に興味を示すと、匿名性の高い通信アプリに誘導された。

 相手は「仕事はセキュリティー関係」と名乗り、翌日午後6時に直接会うことになった。仮想通貨と手数料が専用アプリに入金されたのを確認し、その場で現金500万円を手渡す段取りだった。

 JR盛岡駅近くの商業施設。男性は遠方から新幹線で来る相手のために郷土のお菓子を買い求め、現金と一緒に手提げの紙袋に入れていた。すると、相手から「急用で行けない」と連絡があり、部下を名乗る若いアジア系とみられる男が現れた。

 「このアプリで詐欺被害に遭った」。男性が用意したアプリは信用できないとして、男は別のアプリをその場でダウンロードするように促した。その際、「確認のため」と12桁のパスワードを表示した画面を撮影された。しかし、すぐに消去してくれたため、男性は「やはり確認のためだったのかな」と特に気にとめなかった。

 男性が新しいアプリに入金されたのを確認し、手提げ袋をテーブルに置くと、男はそれを持って立ち去った。その直後、LINEの相手から電話があった。「どうでしたか?」「大丈夫でした」。約5分後、アプリを見ると何者かが仮想通貨を勝手に出金していた。

 一瞬のすきにパスワードが盗まれ、電話中を狙って遠隔操作でログインされた可能性が高かった。500万円は男性が将来に向け、働いて貯金していたものだった。

 「財産のほとんどを取られても、これから生きていくしかない」。過去に友人がだまされ、詐欺に関する知識は豊富なはずだった。思い返せば、相手が待ち合わせ場所に現れず、その場で別のアプリに変更させられたことなど不審な点はあった。

 「9割は疑っていたのに、詐欺の被害に遭った話を聞いて同情してしまった。1割の油断につけ込まれた。SNSでのもうけ話は絶対に信用してはいけない」

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 SNSを通じて「投資をすれば利益が得られる」と信じ込ませ、アプリなどに誘導し、お金をだまし取る「SNS型投資詐欺」は急増している。警察庁によると、今年1~7月には全国で4099件(前年同期比3294件増)の被害があり、約580億円(同約489億円増)がだまし取られた。

 同庁は不安を感じた場合、警察相談専用電話(#9110)や消費者ホットライン(188)への相談を呼びかけている。また、特殊詐欺に関する情報提供は匿名通報ダイヤル(0120・924・839)で受け付けている。(小幡淳一)