児童16人が犠牲…竜巻被害刻んだ石碑 「活用されているのかな」伝承碑登録へ、奔走した防災士

AI要約

竜巻被害を刻んだ石碑が宮崎市の小学校に残る歴史

防災士が石碑の登録に奔走し、SNSで関心を高める取り組み

突風被害を受けて再び石碑の重要性が浮き彫りに

児童16人が犠牲…竜巻被害刻んだ石碑 「活用されているのかな」伝承碑登録へ、奔走した防災士

 台風10号接近のさなか、竜巻とみられる突風が起きた宮崎市で、児童16人が犠牲になった143年前の竜巻被害を刻んだ石碑が市中心部の小学校に残る。宮崎県都城市の防災士、栗原ちひろさん(37)は、石碑への関心を高めようと国土地理院の「自然災害伝承碑」登録に奔走、「先人のメッセージを知ってほしい」と交流サイト(SNS)で発信し続けている。

 県庁近くの宮崎小には「招魂碑」と書かれた碑がひっそり立つ。竜巻は1881(明治14)年9月29日に発生し「つむじ風が激しく吹き、あっという間に校舎が倒壊」と記録。児童16人が圧死、負傷者は教師を含め40人余りに。碑は7年後に建立され、犠牲者全員の名前が記された。

 栗原さんは2020年、夫の転職で福岡県糸島市から都城市に移住。移住前は気象予報士として活躍していた。200人超の死者を出した18年の西日本豪雨に衝撃を受け「天気予報を一方的に伝えるだけではだめだ」と防災士の資格も取得。災害を伝える碑を調査するなどしてきた。

 招魂碑は移住後、本で知り、現地に足を運んだ。SNSで「避難訓練もいいけどこれは活用されているのかな」と発信し、碑文が全部漢字で書かれていたため「ひかり拓本で読み取りたいな」と投げかけた。ひかり拓本は墨を使わず文字に光を当て、影を基に拓本を採る新技術。九州医療科学大の山内利秋准教授(博物館学)が協力し、宮崎市に働きかけ、昨年3月、伝承碑登録にこぎ着けた。

 突風被害が出た8月29日「今こそ招魂碑に目を向ける時」とSNSで訴えた栗原さん。「碑を造った人々の思いを受け止め、悲劇を繰り返さない行動が大事だ」と語る。宮崎小の大垣雅史教頭は「命を大切にする学習や防災教育で碑を生かしたい」と話す。(神屋由紀子)