自称霊媒師と結婚のノルウェー王女、王位継承順位は第4位だが…日本の皇室とはどう制度が違うのか

AI要約

ロマノフ王朝を崩壊に向かわせたラスプーチンという霊媒師について

日本とノルウェーの王室の結婚制度の違いについて比較

日本の皇室とノルウェー王室の結婚制度における悪影響の違いについて

 (宇山 卓栄:著作家)

■ ロマノフ王朝を崩壊に向かわせたラスプーチンという霊媒師

 8月31日、ノルウェーのマッタ・ルイーセ王女が自称「シャーマン」のアメリカ人男性ドゥレック・ベレット氏と結婚式を挙げました。

 かつて、ロシアのロマノフ王朝では、グレゴリー・ラスプーチンという霊媒師がいました。ニコライ2世の皇后アレクサンドラに近づき、事実上の愛人となり、皇室を攪乱させました。これが、ロマノフ王朝滅亡の原因の一つとなります。

 日本では2021年に眞子様が結婚された際、さまざまな意見が出ましたが、皇室や王室の結婚では、何でもかんでも「御意のままに」とはいかないのです。

 日本の皇室の場合、女性皇族が一般人男性と結婚をすれば、皇族身分から離れなければなりません(臣籍降下)。そして、二度と皇族の身分には復帰できないことが定められています。

 しかし、ノルウェーをはじめヨーロッパの王室には、結婚に伴う臣籍降下の制度はありません。マッタ・ルイーセ王女は結婚後も王女のままであり、王位継承権も保持したままです。ここが、日本の皇室とは大きく異なる点です。

 日本の皇室では、女性皇族がどのような一般人男性と結婚しようとも、その男性の存在が皇室に影響を与えることはできませんが、ノルウェーのようなヨーロッパ王室では、女性王族が王族に留まるのはもちろんのこと、その配偶者も王族になり、「殿下」と呼ばれるようになります。そして、王室はその一般人男性からの影響を直接受けることになります。

 今回、結婚したドゥレック・ベレット氏は、すでに王女と「プリンセスとシャーマン」と題したセミナーを開催し、また関連のグッズを販売するなど、王室を商業利用していると批判されています。少なからず、悪影響がノルウェー王室に及んでいるのです。

■ ノルウェー王室の制度は開放的とも言えるが…

 日本の皇室は結婚後、女性皇族を臣籍降下させ、皇族から切り離すという制度を歴史的に継承し、このような影響を防いできました。 これは先人の知恵と言えます。

 皇族や王族の結婚は一般人家庭の結婚とはまったく違います。

 問題のある人物が結婚相手になれば、皇族や王族はネガティブな影響を受け、場合によっては、その権威を地に落としてしまいかねません。

 そのため、日本の皇室では、親王などの男性皇族については、結婚に際し、皇室会議の議決を経なければならないと、皇室典範第10条に規定されています。女性皇族はその必要がなく、法的には、当事者だけの合意のみで結婚できます。

 男性皇族にだけ、規定が存在するのは、男性皇族は皇室に留まり、女性の配偶者を皇族として迎え入れるためです。女性皇族は結婚により、臣籍降下されるため、男性皇族と異なり、結婚相手の自由な選択が認められているのです。

 皇室はこれまで、一般女性を皇族に迎え入れても、一度も男性を皇族として迎え入れたことはありません。男系継承の理念により、一般男性は皇族になることはできません。一般男性を皇族に関わらせないとする考えがあり、皇室の乗っ取りを防ぐ手立てとなってきました。

 一方、ノルウェー王室では、女性王族が自由に結婚相手を選ぶことができ、その上で、王族に留まり、また配偶者も王族の一員になれるという、ある意味、開放的な制度になっています。それゆえ、ひとたび、王室に悪影響を加えるような結婚相手が現れたとしても、排除する手立てはなく、直接的に被害を受けることになります。