「反トランプの急先鋒」から「熱狂的な支持者」に変貌…海外メディアが報じた「トランプの副大統領」の迷走ぶり

AI要約

トランプ陣営の副大統領候補が迷走し、支持層を失いつつある状況が報じられている。

民主党のハリス氏が激戦州で優位を築きつつあり、トランプ陣営は焦燥感を隠せない様子だ。

ヴァンス氏の失言や振る舞いが非生産的であり、共和党内でも戦略の見直しを求める声が上がっている。

■「大のトランプ嫌い」から一転、迷走の副大統領候補に

 今年11月5日の米大統領選を前に、共和党のドナルド・トランプ陣営の旗色が冴えない。トランプ氏自身が陰謀論めいた言動で混乱を招いているほか、輪をかけて痛手となっているのが、副大統領候補に自ら指名したJ.D.ヴァンス上院議員の迷走だ。

 ヴァンス氏はかつて、極端なトランプ嫌いで知られた。自身のTwitter(当時)で、「なんという馬鹿者」「アメリカのヒトラー」などと厳しい批判を繰り広げていた経緯がある。

 しかし、トランプ氏の強烈なキャラクター性が自身の政治家生命に有利に働くと判断すると、熱烈なトランプ支持者に転向。知名度向上のため、到底支持できない政治家の尻馬にあえて乗った格好だ。

 同床異夢のトランプ陣営は、有権者に見透かされている。着実に支持層を広げるライバル・民主党のカマラ・ハリス氏(現副大統領)に対し、激戦州7州のほぼ全域でリードを失った。暴走するトランプ氏とその副大統領候補のコンビに、共和党支持者たちの間にも当惑が広がる。

■激戦州のほぼ全てでリード失う

 米ニューヨーク・タイムズ紙は8月14日、トランプ陣営の停滞を報じている。バイデン大統領が選挙戦から撤退し、民主党がハリス氏を正式指名した8月6日以降、「大統領選がわずか数週間で様変わりした」と指摘する内容だ。

 同紙の独自調査、および非党派の選挙予測誌『クック・ポリティカル・レポート』などによる世論調査によると、選挙戦を占ううえで重要なスイングステート(激戦州)7州のうち6州で、ハリス氏がややリードあるいは接戦になっている。

 バイデン大統領が選挙戦から撤退し、後継者にハリス氏を指名したことで、ハリス氏の好感度が13ポイントの急上昇をみせた。ハリス氏は民主党支持者のみならず、無党派の男性層からも強い支持を受けている。

■「まごつき、取り乱している」焦燥のトランプ陣営

 対するトランプ陣営は、焦燥の色を隠せない。英フィナンシャル・タイムズ紙は、民主党がヴァンス氏の数々の不適切な言動を引き合いに出し、氏を「奇妙な」人物として描こうとしていると報じている。

 CNNは日本語版記事で、トランプ氏が「経験したことのない急速に変化する政治情勢にまごつき、取り乱しているように見える」と指摘。「悪意に満ちたメッセージや、人種差別的な侮辱、陰謀めいた攻撃」を繰り出して状況を取り繕っていると述べている。

 こうした行動は支持者たちの目にすら非生産的に映っており、トランプ陣営としてはハリス氏の出鼻をくじく機会を完全に逸した格好だ。同じ共和党内からすら、戦略を改めるよう求める声が上がる。

 共和党の世論調査員のフランク・ランツ氏は、米CNNのインタビューで、「(政策上の)課題に焦点を当てれば、トランプは成功する可能性が高い。しかし、(候補者の人種など)属性に焦点を当てれば、ハリスが成功する可能性が高くなるだろう。なぜなら、人々は彼女をトランプよりも好んでいるからだ」と述べている。

 バイデン氏は高齢が懸念材料となり、トランプ氏は極端な言動で避けられてきた。難しい選択を迫られていたアメリカ国民の前に、突如として米民主党からハリス氏という選択肢が登場。一挙に注目を集めた格好だ。

■女性政治家たちを「子供のいない猫好きの女性」と揶揄

 ハリス氏に対し、ヴァンス氏が優位を保てないのはなぜか。ヴァンス氏はある意味で、トランプ氏に似ている。衝動に駆られた失言が、随所で悪目立ちしているのだ。

 2021年には、ハリス副大統領を含む民主党の政治家たちを「子供のいない猫好きの女性たち」と揶揄。女性蔑視だとして猛烈な批判に晒された。

 米ABCニュースによるとヴァンス氏は、ハリス氏やピート・ブティジェッジ運輸長官、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員など、子供を持たない民主党の政治家たちを批判。「我々の国は、子供のいない猫好きの女性たちによって運営されている。彼女たちは自分の人生に不満を持ち、その選択に後悔しているので、他の人々も不幸にしようとしているのである」と述べた。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、この発言が「全国的な反発」を引き起こしたと報じている。英BBCによるとヴァンス氏は、米キャスターのメーガン・ケリー氏とのインタビューで、「明らかに皮肉を交えたコメントだった」と弁明。「民主党が反家族的で反子供的になっていること」を批判する意図だったと釈明に追われた。