事故で死亡した娘 「聴覚障害」を理由に「賠償額」減額の判決 控訴した父の思い

AI要約

裁判で聴覚障害を理由に賠償額を減額された女性の事例を巡る裁判が結審。

1審では聴覚障害の労働能力への影響を考慮し賠償額が決定されたが、控訴審では専門家の証言により疑問が投げかけられた。

裁判所による『障害を理由とする差別』に対し、公平な判決を求める両親の訴えが最終意見陳述で語られた。

事故で死亡した娘 「聴覚障害」を理由に「賠償額」減額の判決 控訴した父の思い

事故で死亡した女の子が聴覚障害を理由に賠償額を減らされた判決の見直しを求めた裁判の控訴審が結審した。

6年前、大阪市生野区で聴覚に障害があった井出安優香さん(当時11)が歩道に突っ込んできた重機にはねられて死亡した。

両親は、損害賠償を求めて裁判を起こしたが、1審は「聴力障害が、労働能力を制限し得ることは否定できない」として、安優香さんが将来得るはずだった収入、「逸失利益」を平均の85%と判断した。

両親は聴力障害と労働能力との関係が正しい見識に基づいて判断されなかったほか、検討すらされていないなどとして控訴。

大阪高裁(徳岡由美子裁判長)で行われた2審では、新たに聴覚教育学の専門家である宮城教育大学の松崎丈教授が証人として出廷し「聴力が正常であることが、学力やコミュニケーション能力の発達に不可欠な要素ではない」と指摘。

その上で「安優香さんの学力やコミュニケーション能力は年相応に成長していて、成長し、就労した場合、障害のない者と遜色なく労働能力を発揮できていたと評価してよい」と証言した。

両親の代理人は、9月3日の最終意見陳述で「聴力障害を理由に労働能力が制限されるという言説は、思い込みや偏見に過ぎず、裁判所による『障害を理由とする差別』にほかならない」と述べ、公平な判決を求めて裁判は結審した。

安優香さんの父親、井出努さんは、閉廷後の会見で「9月10日が(安優香さんの)誕生日で18歳になります。1人で家の中にいるときは、いつも姿の見えない娘の成長した姿を想像し、苦しい思いをずっと押し殺して過ごしています。これまでの判例、前例のない判決を期待しています」と話した。

判決は、来年1月20日に言い渡される予定だ。