生成AI活用でも授業と校務は相似形――生成AIも活用した校務DX【3】

AI要約

校務DXが進まない理由や校務のデジタル化が授業にどう役立つかについて解説されている。

愛知県春日井市の事例や生成AIの活用による校務DX推進の効果、教員のマインドセットの重要性についても触れられている。

さらに、生成AI利用のガイドラインやパイロット校の事例を通じて、校務の効率化や教員の負担軽減に向けた取り組みが進められていることが紹介されている。

生成AI活用でも授業と校務は相似形――生成AIも活用した校務DX【3】

 DX化チェックリストで見てきたように、学校で使える標準的なクラウドサービスを使って簡単にデジタル化できる業務はたくさんある。それにもかかわらず校務DXが進まない理由はいくつかある。これまでのやり方を踏襲する方が安心できたり、忙し過ぎてデジタル化に割ける時間がなかったりすることもあるだろう。デジタル機器に苦手意識を持つベテラン教員も少なくない。

 しかし、少し視点を変えて、校務のデジタル化がICTを活用した授業にも役立ち、子供たちの学びを進化させるとしたらどうだろうか。DX化チェックリストの得点で全国4位だった愛知県春日井市の教育委員会 教育研究所で教育DX推進専門官を務める水谷年孝氏は、「授業と校務は相似形」だと表現する。同市では、GIGAスクール構想で整備された端末を教員が校務に普段使いすることで、授業でもICTの活用が進んだ。

 一般的な例を挙げると、Webフォームで教職員のアンケートを取れば、同じ仕組みを使って児童・生徒の意見を簡単に集約し、全員で共有できると気付く(図1)。ICTを使った校務で得たスキルやアイデアが授業でも生かせる。2つは全く同じではないが、“相似形”だというわけだ。そうしたスキルやアイデアを生かした授業は、子供たちの学びにプラスの作用をもたらすだろう。

 文部科学省 初等中等教育局学校情報基盤・教材課長の寺島史朗氏は、「校務DXを広げるには、先生方のマインドセットを変える必要があるのではないか」と指摘する。校務DXを単なる事務作業の効率化と捉えず、授業の改善にもつながる、つまり児童・生徒のためになる取り組みだという考え方に変えていく。「子供たちの成長と学びのためになると分かれば、先生方は変わる」(寺島氏)。

 前述のように、校務DXの推進に強い追い風となっているのが生成AIだ。人と同じように複雑なタスクを処理でき、仕事の効率を大幅に向上させることが可能だ。マイクロソフトの「Copilot(コパイロット)」やグーグルの「Gemini(ジェミニ)」などが無料で使える。クラウドサービスを使った校内の情報共有やペーパーレス化には組織的な取り組みが必要なのに対し、生成AI活用は個人でもできて、しかも時短に即効性がある。

 国は生成AI利用のガイドラインの中で、校務における活用を例示している(図2)。このガイドラインに基づき、2023年度から「リーディングDXスクール」事業で「生成AIパイロット校」を指定し、授業と校務の両面で生成AI活用を実証している。

 パイロット校の一つである大阪市立天王寺中学校では、図3のように案内文や小テストの作成などに「ChatGPT」を使って効果を上げた。こうした報告やパイロット校の取材を通じて、教員の負担軽減に効果が高そうな校務が見えてきた(図4)。