「好きな人」にお金を騙し取られたらどうするか…弁護士が指南する「泣き寝入りしないための2つの方法」

AI要約

恋愛感情を利用されてお金を騙されてしまった場合、被害者は民事と刑事の2つのアプローチがあるが、金銭回収は難しい。

恋愛感情に基づくトラブルが起こることがあり、詐欺行為や事件へと発展することもある。

詐欺罪の成立要件や厳罰化についての考え方と、被害者の権利行使の重要性が説明されている。

恋愛感情を利用されてお金を騙されてしまった場合、被害者はどうすればいいのか。アトム法律事務所の松井浩一郎弁護士は「民事と刑事の2つのアプローチが用意されている。しかし、いずれの措置をとったとしても加害者に支払い能力がなければ、最終的に金銭を回収することは難しい」という――。

■恋愛感情がときに命を奪う事態に…

 少し無理をしてでも、好きな人のためならば――。そんな軽はずみな気持ちをもってした行動が、時として大きな事件へと発展する。

 恋愛感情を抱き、多額の金銭を相手に貢いでしまうことによるトラブルが後を絶たない。その中でも比較的記憶に新しいのは、男性心理を手玉に取り、複数の男性から多額の財産を詐取したとして話題となった「頂き女子りりちゃん」の事件であろう。

 詐欺行為を「頂き行為」などと称し、その巧妙な手口をマニュアル化して販売したことで、連鎖的に被害を受けた男性が複数存在する。

 2024年5月には、西新宿のタワーマンションにおいて刺殺事件が発生してしまったが、この件も、加害者である51歳男性が25歳の被害女性に対して1000万円近くの財産を貢いだにもかかわらず、その後関係を切られてしまったことが、犯行動機の一部になったとのことである。事案や結果は異なるにせよ、いずれも男女間の恋愛感情に基づくトラブルだ。

■「詐欺罪」の成立要件とは

 どんな理由があったとしても、他人の生命・身体に対して危害を加えるということは、絶対にあってはいけない。西新宿タワマン刺殺事件については、その動機が如何なるものであれ、加害者には厳罰を望むところである。

 他方で、「頂き女子りりちゃん」の事案でも問題になったように、男性が詐欺の被害者であることが明らかなケースにおいては、被害者としての正当な権利行使が認められる必要がある。

 そもそも、前提として整理すべきは、いかなる場合に詐欺罪が成立するのかという点である。刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と定める。すなわち、詐欺罪は、人を欺く行為(欺罔行為)により、その人が錯誤に陥り、その錯誤に基づく財産の交付がなされることで成立する犯罪である。