「男性養護教諭」はなぜ少ない?当事者に聞いた、問題は性別でなく「選択肢がない点」の理由と「ケア職=女性」の社会的イメージが採用にも及ぼす悪影響

AI要約

男性養護教諭の珍しさと役割について、長野氏と津馬氏のインタビュー内容からまとめると、男性が持つ利点と苦労、子どもたちとの関わり方について明らかになっている。

長野氏は元看護師で養護教諭への転身を決めたきっかけ、津馬氏は自身の不登校経験から養護教諭としての活動への思いを語っている。

「男性養護教諭」はなぜ少ない?当事者に聞いた、問題は性別でなく「選択肢がない点」の理由と「ケア職=女性」の社会的イメージが採用にも及ぼす悪影響

「保健室の先生が男性」と聞くと「珍しい」と感じるだろう。それもそのはず、全国の男性養護教諭は80人(2023年度)。養護教諭全体の約3万7000人に占める割合はわずかだ。そこで2名の男性養護教諭に、男性であることの利点や難しさ、子どもたちとの関わり方などについて聞いた。

今回取材に応じてくれた長野雄樹氏と津馬史壮氏は、ともに現役の養護教諭だ。それぞれ、小学校、高校、特別支援学校など、校種を越えた異動を経験した教員生活のミドル世代にあたる。

名古屋市内の公立小学校に勤務する長野氏は、元看護師だという。新生児集中治療管理室(NICU)と一般の小児科病棟で勤務した後、教員免許を取得。北海道の夜間定時制高校で勤務後、現職枠で名古屋市教員採用選考試験を受け、特別支援学校を経て今年度4月から現任校で働いている。

「養護教諭を目指したのは、ある患者さんとの出会いがきっかけです。その子は難しい病気を抱えて入退院を繰り返していたのですが、中学校に上がると浮かない表情をたびたび見かけるようになって。話を聞くと、先天性の疾患による特徴的な顔立ちや、治療で学校を休みがちなことがきっかけでいじめに遭い、学校に行けなくなってしまったというのです。

子どもたちが本来いるべき場所は病院ではなく、地域や家庭、学校です。病気や障害を持ったままこうした場所に戻っていく子どもたちを支えることのできる仕事はないかと考え、養護教諭の道を選びました」(長野氏)

津馬氏は、養護教諭14年目。現在4校目で、自分よりキャリアの長い女性の養護教諭と2人の複数配置で仕事をしている。

「私自身は不登校の子どもでした。でも、他校の不登校の子に会いに行くようなアクティブな不登校児で。その経験から『不登校』というレッテルだけで見られて、その子の背景や能力が認められないことに疑問を感じていました。不登校の子をよくみてあげられる居場所になりたいと思い、初めはカウンセラー、その次に考えたのが養護教諭でした。当時は倍率がかなり高く、10自治体以上を受験して2年目で本採用されましたね」(津馬氏)