相続税300億円を「4分の1以下」に抑えた…元国税調査官が舌を巻いた田中角栄の「大胆な節税」のカラクリ

AI要約

田中角栄は日本の会計や税法を熟知し、巧妙な節税策を使って政治資金をつくっていた。

彼は「危ない金」の取り扱い方を知り、常に現金で受け取り、保管する哲学を貫いていた。

日本の徴税システムの欠陥をついており、収入を税務当局に正確に把握されないよう手段を講じていた。

金権政治で知られる故・田中角栄元首相はどのような政治家だったのか。元国税調査官の大村大次郎さんは「田中角栄は日本の会計や税法を熟知していた。脱税に半歩踏み込んだような巧妙な節税策を使って、政治資金をつくっていたとみられる」という――。(第2回)

 ※本稿は、大村大次郎『脱税の日本史』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■実は会計の達人だった田中角栄

 田中角栄というと、闇将軍、金権政治といった言葉を思い浮かべる人が多いでしょう。

 しかし、田中角栄は、実は会計の達人だったのです。

 田中角栄は裸一貫で身を起こし、日本の総理大臣にまで上り詰めました。おそらく巨額の政治資金が必要だったでしょう。

 当たり前にやっていたのでは、大きなお金はつくれません。日本では、お金をたくさん稼いでも、たくさんの税金を取られてしまうためです。

 田中角栄は、脱税の一歩手前か、脱税に半歩踏み込んだような巧妙な節税策を使って、政治資金をつくっていたのです。

■「危ない金」の扱い方を知っていた

 彼は日本の会計や税法を熟知していました。

 政治家は、表にできない「危ない金」を扱うことが必ずと言っていいほどあります。

 田中角栄は、「危ない金」の取り扱いについて常に一つの哲学を貫いてきました。

 「あぶない金は現金で受け取り、現金で保管する」

 ということです。

 これは徴税システムの欠陥をとてもうまくついているものです。

 収入には税金がかかります。でも、収入を税務当局に把握されなければ、税金はかかってきません。

 「日本は申告納税制度の国なんだから、税務当局から把握されようがされまいが、きちんと税金は納めるべきじゃないか」

 と思う人もいるでしょう。

 もちろん建前はそうです。でも現実は、建前通りにはいかないのです。

 現金で収入が入り、かつ領収書の発行をしない業種は、税務署から収入が把握されにくいのです。