被爆地つなぐ親善試合 長崎大・広島大サッカー部が10、11日に広島市で初開催

AI要約

長崎大と広島大のサッカー部が、原爆被災地として初めて親善試合を開催する。田中監督が足元の歴史を見つめる機会を提供したいと企画。試合では両チームの部長が平和宣言も行う。

田中監督は被爆3世で、幼い頃から原爆の悲惨さを学び、学生たちにも同様の体験をさせたいと考えている。試合を通じて新しい平和の形を築きたいと語る。

長崎大の部員は半数が県外出身で、原爆問題について考える機会が少ないとのこと。試合に参加することで、原爆の知識や体験を増やし、社会に出る際の参考になると期待されている。

被爆地つなぐ親善試合 長崎大・広島大サッカー部が10、11日に広島市で初開催

 長崎大と広島大のサッカー部が、79年前に原子爆弾が投下された同じ被爆地として初めて親善試合を行うことになった。被爆3世でもある長崎大の田中朴通(なおと)監督(29)が、学生たちに足元の歴史を見つめるきっかけにしてもらおうと企画した。10、11日に広島市で試合を行い、両チームの部長による「平和宣言」も発表する。田中さんは「原爆の悲惨さを伝えた上で、スポーツを通じた新しい平和の形を実現したい」と語る。

 田中さんは長崎市出身で、祖母が被爆者という。幼い頃から長崎原爆資料館に足を運んだり、被爆者講話を聞いたりしてきた。長崎大に進学し、4年生となった7年前から監督を続けている。現在は南山高(同市)の教諭として国語を教えている。

 部員30人のうち半数は県外出身者で、原爆問題について考える機会が少ない人が多いという。「せっかく長崎で暮らすのであれば、少しでも原爆についての知識や体験を増やして社会に出てほしい」と話す。

 広島大に協力を求めてはみたものの、引き受けてもらえるか不安だったという。広島大は全国大会に出場経験があり、プロ選手も輩出している強豪。「こちらはそれほどの実力はないので…」

 快諾の返事が届いたのは5月で、「二つの大学が一緒にプレーすることに大きな意味がある」と後押しまでされた。田中さんは「平和を願う気持ちは多くの人が持っている」と実感したという。

 長崎大の部員に親善試合について説明すると、全員が目を輝かせた。原爆資料館を訪れたり、平和公園周辺の清掃活動に励んだりと積極性が出てきた。試合のある10日には広島市の平和記念資料館も訪れる。

 7日、両大学はオンラインで合同記者会見を開いた。長崎大の主将吉次晃史さん(22)は「連携して何かできるなんて。僕たちの世代から始まることは光栄」と話した。広島大の主将山辺樹さん(22)は「サッカーを通して平和について考え、次の世代にもつなげたい」と述べた。

 被爆80年を迎える来年は、長崎に広島大を招いて開催したいという。遠征費などは手弁当のため、支援してくれる企業や寄付を募る。田中さんは「二つの被爆地のサッカー部をつなぐ大切な行事として続けたい」と意気込んだ。田中さん=080(1753)9296。 (貞松保範)