武蔵小杉のタワマンは羨ましいが…修繕積立金「高利回り運用」は本当にいいの?「ひとつ屋根の下」の運用リスク

AI要約

新築マンションの高騰状況が話題となる中、中古マンションの需要が増えていることが明らかになっている。

マンションの維持管理が将来的な社会問題に発展する可能性があることが示唆されている。

修繕積立金を積極的に運用する管理組合の事例が紹介され、リスクと向き合う必要性が語られている。

 分譲マンション所有者にとって興味深いニュースが先月、朝日新聞デジタルで配信された。タワーマンションが林立する武蔵小杉で、ある管理組合が修繕積立金20億円を一歩踏み込んだ形で運用しているというものだ。月々の修繕積立金の支払いに頭を痛めるマンション所有者や、積立金の不足に悩む管理組合にとっては、ぜひとも参考にしたい事例だろう。だが、そこには当然リスクもある。足元では日米株価が大暴落している。積立金の積極運用にどう向き合うべきなのか。マンションをはじめ不動産事情に詳しいオラガ総研の牧野知弘代表が解説する。

 ◎参考:朝日新聞デジタル『武蔵小杉のタワマン 修繕積立金20億円 プロの住民が選んだ投資先』(2024年7月10日)

 (牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)

■ 新築志向が都市伝説化し、次の問題は…

 新築マンションの高騰状況が話題になっている。

 拙著「なぜマンションは高騰しているのか」(祥伝社新書)を出版したところ多くのメディアから取材依頼が来た。東京都内で供給される新築マンションの価格は平均で1億円を超え、もはや一般庶民の手には届かぬ存在になった。

 なぜなら地価が上昇したうえに建物建設費が高騰を続け、一般的に建物価格の比率が高いマンションは、販売価格の高騰に庶民の年収が追い付かず、マンションを供給するデベロッパーも富裕層や国内外の投資家、節税目的の高齢富裕層に一部高収入のパワーカップルだけを相手にするマンションしか供給しなくなったからである。

 では、一般庶民でマンションが欲しい人はどうすればよいか。中古マンションである。

 実際中古マンションの取引件数は近年大幅に増え、成約価格も上昇傾向にある。日本人は新築志向が強いと言われてきたが、2023年の首都圏における新築マンション供給戸数が2万6886戸(不動産経済研究所調べ)だったのに対して、中古マンション成約件数は3万5987戸(東日本不動産流通機構調べ)とすでに中古中心のマーケットになっている。

 新築志向はもはや都市伝説と言ってもよいのかもしれない。

 マンションは新築であれ中古であれ、購入することばかりが話題になりがちだが、購入後の建物管理や修繕についてはあまり触れられることがない。国内におけるマンションストックが700万戸になる中、今後はマンションという建物の維持管理が大きな社会問題になる可能性が出てきている。