『24時間テレビ』、“偽善”と批判されても「打ち切り」にすべきではない理由

AI要約

日本テレビ『24時間テレビ47』に対する批判が高まっており、特に昨年不祥事があった日本海テレビジョン放送の元経営戦略局長の募金横領事件が影響している。

不祥事の重さは計り知れず、募金を着服した元局長の行為は非難され、日本海テレビは公益社団法人24時間テレビチャリティー委員会から除名すべきだったとの意見もある。

一方で『24時間テレビ』は福祉活動や社会貢献に寄与し、多くの人々に感動と支援を呼びかけ続けており、この番組が終了すべきではないとの声も根強い。

■ 募金ネコババの罪は重い

 日本テレビ『24時間テレビ47』(8月31日午後6時半~9月1日午後8時54分)の放送が近づき、この番組への批判が高まっている。打ち切りを求める意見もある。

 毎年のことだが、今年の批判は特に激しい。昨年11月に発覚した日本海テレビジョン放送(鳥取市)の不祥事のせいである。番組に参加している同局の54歳の元経営戦略局長が募金を使い込んでいた。

 情状酌量の余地がない不祥事だった。元局長は募金のうち約137万1000円を約7年にわたって着服した。パチンコや飲食費に使ってしまった。募金を自分の財布代わりにしていたわけであり、恥知らずとしか言いようがない。

 元局長は昨年11月に懲戒免職になり、7月22日には業務上横領の疑いで鳥取地検に書類送検された。田口晃也前会長は引責辞任した。だが、これでは生ぬるい。

 日本海テレビは番組への参加局でつくる「公益社団法人 24時間テレビチャリティー委員会」の会員だが、除名にすべきだった。この委員会の目的は募金の管理で、だから公益社団法人格であるのに、管理が出来ていなかったのだから。

 あるいはペナルティとして向こう数年間、日本海テレビには『24時間テレビ』をネットすべきではなかった。日本海テレビは丸1日番組がなくなり、窮地に陥るが、自業自得である。

 募金には子供からのものも含まれていたはず。共生社会の実現を訴える番組に共鳴した子供たちを裏切ってしまった。もちろん大人の募金の着服も許されない。日本海テレビは寄附文化そのものへの信頼も損ねてしてしまった。罪の重さは計り知れない。

 一方で『24時間テレビ』は終わるべきではない。この番組が消えてしまうと、今の民放には「善」がほぼ見当たらぬ状態になってしまう。この番組は「偽善」かも知れぬが、存在しないより遥かにいい。

■ お茶の間に「福祉」の視点を根付かせた功績

 この番組は障がい者や高齢者との共生を呼び掛けたり、子供の難病患者の実情を紹介したり、子供食堂の重要性を訴えたりしてきた。子供たちが福祉について考える入口になってきた。

 香川県には中学生の時に『24時間テレビ』を見て心打たれ、高校時代から手話を習い始め、手話通訳士となった男性がいる(四国新聞2015年3月19日付)。島根県出雲市では幼稚園児から高校生までが一丸となって番組への募金を集め始め、やがてグループで障がい者と交流するようになった。地域の結び付きも強まった。

 こんな動きは例を挙げたらキリがない。毎年、番組の放送時期になると、全国の中高生たちが募金集めに参加する。その中から福祉大に進む人、福祉の仕事に就く人、福祉への理解の深い人が生まれる。やはり、この番組は終わらせるべきではない。筆者のこの考えは四半世紀前から変わっていない。

 過去46回の『24時間テレビ』に寄せられた募金は433億2769万3640円。番組側はこれを基に、バスケットボール用車いすやスポーツ用義足、車椅子で乗れるリフト付きバス、電動車椅子などを必要とする団体や個人に贈ってきた。いずれも行政のサポートが不十分だから、行き渡っていないものである。

 近年は子供食堂の支援も行っている。無料塾と並び、子供の間の格差をなくすためには欠かせないものと考えられるが、やはり行政のサポートは十分ではない。それらを『24時間テレビ』を見た人たちの浄財によって補おうとする発想は貶されるべき話ではないはずだ。