隣人が野良猫に餌…ふん尿に鳴き声、被害深刻 捕獲に裏付けとなる法令なし 住民主体で管理する地域も

AI要約

福岡市南区で隣人が野良猫に餌を与え、ふん尿や鳴き声の被害が続く悩みが紹介される。

市動物愛護管理センターや福岡県弁護士会などが対策や議論を展開している状況が明らかにされる。

地域猫活動や不妊・去勢手術など、野良猫問題に取り組む取り組みが紹介され、自治会が手掛ける事例も紹介される。

隣人が野良猫に餌…ふん尿に鳴き声、被害深刻 捕獲に裏付けとなる法令なし 住民主体で管理する地域も

 隣の住人が野良猫に餌を与えて、ふん尿や鳴き声の被害に困り果てている-。福岡市南区の50代女性から本紙「あなたの特命取材班」に悲痛な悩みが寄せられた。猫よけの対策は効果が見られず、相談した市には「捕獲できない」と説明されたという。女性はどこにSOSを求めればいいのか。現場を訪ねた。

 「ミャ~オ」。平日夕方、同区の住宅街。調査依頼を寄せた女性宅の隣のアパートから野良猫の鳴き声が聞こえてきた。トラ模様や灰色など約10匹が寝転んだり、塀の上を歩いたり。

 女性によると、アパートに住む男性は2、3年前から玄関近くで朝夕、3匹の猫に残飯を与え始めた。

 猫はみるみる繁殖。塀を跳び越えて女性宅の庭にふん尿をまき散らし、それが庭に出た孫の服に付着、異臭を放った。夜中は「ギャー、ギャー」と鳴き声が聞こえ、家族は寝不足になった。

 猫を追い払おうと、庭の5カ所にセンサーが侵入に反応して音や光を発する機器を約2万円かけて設置。家の通気口は木材でふさいで侵入を防いだ。とげとげのある猫よけシートも置いたが、被害は続いた。

 相談を受けた市動物愛護管理センターが男性に注意したものの、やめる気配はない。女性は「本当に苦痛。でも近所とのトラブルは避けたい」と頭を抱える。

 猫を巡る問題に詳しい福岡県弁護士会の朝隈朱絵弁護士によると、野良猫に対する餌やり自体は違法ではない。ただ、周辺住民らに迷惑や損害が生じる場合は損害賠償請求の対象になる可能性があるという。

 一方で「餌やりがなくなれば他の地域に問題が移る可能性もあり、餌を与える人を責めるだけでは抜本的な解決にはならない」とも指摘する。

 調査依頼を寄せた女性は、同管理センターに野良猫の捕獲を依頼したが、センターの吉柳善弘所長(54)によると、職員にはその権限がないという。犬は狂犬病予防法や市の条例に基づき捕獲できるが、「猫には裏付けとなる根拠や法令がない」からだ。

 猫は早ければ生後6カ月で生殖能力を有する。年2~3回出産し、一度に平均4~8匹を産む。“ねずみ算式”の増殖防止に有効なのが不妊・去勢手術だ。

 手術費の相場は、雌猫が最大4万円、雄猫が同2万円ほど。福岡市獣医師会や民間団体でつくる同市の推進協議会は昨年度、野良猫の多い地域を選定し、手術を無料で行う支援事業を試験的に始めた。昨年度は37病院と提携し、市内34地域の514匹を手術した。

 さらに本年度は同市民が捕獲した野良猫を無料で手術する公募事業を始めた。6月15日開始の1次募集(対象100匹)には3週間で6倍超の申請があり、関心の高さがうかがえる。

 もう一つ、野良猫対策の参考になりそうなのが、住民主体で管理する「地域猫活動」だ。住民が協力して猫を捕獲し、手術を受けさせて元の場所に戻す。その後はみんなで餌やりやトイレの管理を分担する。

 福岡市南区の自治会(約1800世帯)は19年、市に活動を申請、これまで約140匹を手術した。年間経費は餌や捕獲器の購入、交通費、医療費など約35万円かかり、寄付でまかなう。

 以前30匹ほどいた猫はこの5年間で20匹弱に減り、メンバー会長の男性(77)は「自治会全体で取り組むと住民の理解を得やすい」と手応えを感じる。一方、メンバー約25人は60~80代と高齢化し「成果が出るのは何年もかかる。活動を継続できるのか不安」と課題を述べた。