「片足を母犬に食われた犬を生きたままゴミ箱に…」埼玉81歳ブリーダーの残虐非道を放置した行政とオークション業者、大手ペットショップの責任

AI要約

元ブリーダーA(81)が繁殖犬を残虐に扱い、その実態が明らかになった。犬たちは監獄のような環境で苦しみ、虐待されていた。

多くの繁殖犬が死に至る状況で、子犬も母犬も非情な扱いを受けていた。施設内は無法な状態で、動物たちも人々も苦しんでいた。

Aの経営する繁殖場が20~30年にわたり問題視されていたが、行政の対応や監督が不十分で、虐待が続いていた。

「片足を母犬に食われた犬を生きたままゴミ箱に…」埼玉81歳ブリーダーの残虐非道を放置した行政とオークション業者、大手ペットショップの責任

 犬3匹を殺した容疑で逮捕され、40万円の罰金だけで放免となった埼玉県毛呂山町の元ブリーダーA(81)。なぜ残虐非道な行為は長年放置されてきたのか。行政、オークション業者、ペットショップの責任を問う。(前後編の後編)

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 一日中ケージに閉じ込められ、真夏も水1回の“監獄”の中で繁殖犬たちは次々と倒れていった。彼らは糞尿まみれになってもシャンプーをしてもらえず、中には耳ダニで柔道の選手みたいに膨れ上がった耳をした犬たちもいた。衰弱しても獣医にも診てもらえず、使えないと判断されたら窒息死させられた。

 前編では、Aが経営していた繁殖場をよく知る関係者の話を元に、おぞましき「監獄」の実態を伝えた。

 地獄のような環境で産まれ落ちた子犬たちの一部も悲惨な運命を辿った。

「このような環境では出産しても母犬には過度なストレスがかかります。子犬の片足を食べてしまった母犬もいましたが、Aはその子犬を生きたままゴミ箱に捨てていた。死産した子犬を草むらの中へ放り投げていたのを見たこともある」(関係者)

 そして、育った子犬たちをオークション業者に売りに行くのだが、どの子がどの親から産まれてきたかはもはやわからない状態だったという。

「そもそも繁殖犬には名前もついていない。施設の中では死んだ犬が2~3日ほったらかにされていることもあった。ケージに“いる”とマジックで書かれたガムテープが貼られていたことも。交配を担当していた娘が、Aが勝手に口減らししないように伝えるためです」(同)

 なぜこんな無法な業者が営業を続けられてきたのだろうか。関係者や近隣住民の話によると、Aは20~30年前、現在の施設から数十メートル離れた場所でブリーダー業を開業したという。

 関係者はこう話す。

「現在の施設は3つ目。最初に建てた施設は今のところから数十メートル先、2番目は隣にあった。すべて業者に頼まず、自分たちの手で建てた簡易な建物なので、経年で使いづらくなり、その度、Aは土地を買って新しい建物を作ってきた。Aは第一種動物取扱業の登録が厳しくなって以降、登録していないはず。娘名義の登録で営業を続けていた」

 最初に施設があったという土地の登記簿謄本を調べると1989年に購入されていた。Aと取引のあったオークション業者の「プリペット株式会社」は、Aが会員登録した日は「2007年3月27日」、Aの娘は「2012年3月27日」と回答した。

 だが、動物愛護法に基づき施設を管轄し、指導する立場にあった埼玉県生活衛生課にいつからAの施設について把握しているかと聞いても、

「当該施設は2017年に、第一種動物取扱業としてAの娘の名前で登録されている」

 としか答えない。ある近隣住民は「数年前にAと揉めて出て行った元従業員が保健所や警察に杜撰な実態を告発して大騒ぎしたはず」と答えているが、そうした話を含めて過去にA名義で経営していた時の記録について問い合わせても「公表していない」と繰り返すばかりだった。

 そして「過去3年間、動物愛護法に適合していない箇所について12回指導を行なってきた」と言うのだが、指導した内容は「ケージの大きさや犬一頭あたりの使用スペースなどの施設の改修」だけだったといい、「窒息死のような虐待事案は把握しておらず、事件になって初めて知った」。

 関係者がデイリー新潮に証言した杜撰な動物管理や口減らし行為についても「噂としては聞いているが事実としては把握していない」と答えた。