なぜヤンキーは車高の低いクルマに乗りたがるのか?→専門家の考察が目からウロコだった!

AI要約

車高が低いクルマには、単に「悪そうに見える」だけではない利点がある。車高を下げると走行性能が向上し、走りの安定性が増す。さらに、デザイン面でも車高を下げることでスタイルが引き締まり、スタイリッシュに見える。

車高が低いクルマが好まれる理由は、サーキットなどの競技での走行性能向上から始まる。特に重心が下がることでコーナリング時の安定性が増し、空力的にも有利となる。

一方で、輸入車などフェンダーとタイヤのすき間を狭めるクルマでは、スタイリッシュなデザインが評価される。日本の雪国向けの国産車では、タイヤチェーンの装着スペースを確保しているため、すき間が広く設定される。

なぜヤンキーは車高の低いクルマに乗りたがるのか?→専門家の考察が目からウロコだった!

 車高が低いクルマを見かけたとき、「不良が乗っているのかな」「ガラが悪そうだな」と感じてしまう人がいるかもしれません。ですが実は、車高が低いクルマには、単に「悪そうに見える」だけではない利点があるのです。その具体的内容を、歴史的背景を交えながら解説します。(モータージャーナリスト 諸星陽一)

● 車高が低いクルマが 「格好良い」と見なされる深いワケ

 車高がかなり低いクルマを見かけたとき、あなたはどう思いますか? もしかすると、「このクルマの持ち主は不良(ヤンキー)なのかな」「ガラが悪そうだな」と勘繰ってしまう一般ドライバーがいるかもしれません。

 それも無理はありません。筆者の見解では、確かに不良というジャンルの人たちは「格好良いクルマ」を好む傾向にあります。そして、古くからクルマ好きの間に「車高が高い=格好悪い」「車高が低い=格好良い」という価値観があるのは事実です。

 筆者は車高が高いクルマを不格好だと決めつけるつもりはありませんが、車高の低いクルマについて分析してみると、単に「悪そうに見える」だけではない、れっきとしたメリットがあることが分かります。本稿では、その利点について解説していきます。

 まずは、車高の違いがクルマの走行性能に及ぼす影響から考えてみましょう。サーキットでの競技で使われるレーシングカーは車高がかなり低くなっています。ルールの関係でノーマルサスペンションを使わなくてならない場合は別ですが、サスペンションの変更が認められている場合、基本的には車高を下げるセッティングをします。

 ここに、車高が低いクルマが好まれる理由が隠されています。

● 車高を下げると 走りの安定性が増す!

 このセッティングを施す理由は、車高を下げると重心も下がり、コーナリング時の安定性が向上するからです。また、空気力学(空力)的にも有利になります。車高を下げて車体下部に入り込む空気を減らすと、揚力(クルマが浮き上がろうとする力)が低減され、走行の安定性がさらに増すのです。

 これは何もレーシングカーに限った話ではありません。乗用車でも、車高を下げると走行性能は上がります。走りの質が高まるからこそ、車高が低いクルマは「格好良い」と認識されているのでしょう。

 とはいえ、レースの世界には例外もあります。「ダカールラリー」などの荒れた路面や砂漠を走るレースでは、路面とボディの接触を防いだり、砂にタイヤが埋もれる事態を避けたりする目的で車高を上げます。

 このため競技では、サーキットレースでは車高を下げ、クロスカントリーラリーでは車高を上げるといったように、種目によってチューニングの戦略が変わってきます。ただ乗用車が砂漠を走ることはないので、やはり車高を下げた方がメリットを享受できます。

 次に、デザイン面について見ていきましょう。

 メーカーのカタログ写真に写っているクルマは、実は市販車よりもフェンダー(タイヤを覆っているパーツ)とタイヤのすき間を狭くし、車高を低く見せている場合があります。

 スタジオで写真撮影を行う際には、車内に砂袋を積み、あえて車高を下げてから撮影する例もあるくらいです。モーターショーなどに展示されるコンセプトカーも、一部の例外を除けば、そのほとんどがフェンダーとタイヤのすき間が狭い仕様になっています。

 こうした工夫が施される理由は極めてシンプルで、すき間が狭いとクルマのスタイルが引き締まって見えるからです。

 しかしながら、実際に売られている国産車の多くは、フェンダーとタイヤのすき間が広く設定されています。日本は国土の約半分が雪国なので、滑り止めのタイヤチェーンを装着するスペースを設けているのです(だからスペースを埋める余地があると言えます)。

 一部の国産車にはフェンダーとタイヤのすき間が狭い車種がありますが、そうしたクルマは装着できるチェーンが指定されています。

 一方で、輸入車にはタイヤチェーンの装着を前提としていない車種があり、フェンダーとタイヤのすき間がかなり狭められています。クルマ好きでなくても、輸入車に「何となく格好いい」という印象がある人は多いでしょう。その「何となく」の正体は、実は「すき間の狭さ」だったりします。

 車高を下げると、このように「走行性能を高める」「愛車をスタイリッシュに見せる」といった効果が得られるのです。