開幕直前パリ五輪でも…2020東京五輪の「エンブレムパクリ事件」なぜ巨大イベントは“言いがかり”の標的にされるのか

AI要約

2020年東京五輪の大会エンブレムに関するエセ著作権騒動について取り上げる。

疑惑の発端やその結果に至るまでの顛末を解説。

デザイナーへの誹謗中傷や非常識な思い込みについて議論。

開幕直前パリ五輪でも…2020東京五輪の「エンブレムパクリ事件」なぜ巨大イベントは“言いがかり”の標的にされるのか

なんらかの作品を創った人は、その「著作権」を有する。自分の考えや想いを作品として表現したのだから、強い思い入れもあろう。だが、「思い入れ」と「思い込み」はまるで違う。

「著作権侵害だ!」と筋違いないちゃもんをつけ、裁判沙汰にするような思い込みクリエーターも残念ながら多数存在する。そうした”エセ著作権”を振りかざし、トラブルに発展した事件を取り上げた一冊が「エセ著作権者事件簿」(友利昴著)だ。

本連載では、ニュース等で話題になった事件も含め、「著作権」にまつわる、とんでもないクレームや言いがかり、誤解、境界線上の事例を紹介。逆説的に、著作権の正しい理解につなげてもらう。

第3回では、前回五輪2020年東京大会(2021年に延期開催)で大騒動になった「エンブレムパクリ事件」を取り上げる。多くの人は、著名デザイナーがデザインをパクって自国開催の五輪に水を差したという印象で終わっているかもしれない…。だが、真相は違う。

そもそもの発端、指摘した人物の人間性、著作権の観点、反論のやり方…深堀りすると次々明らかになる、”残念な要素”が積み重なった、指摘された側にはなんとも理不尽なとばっちりだったのだ……。(全8回)

※ この記事は友利昴氏の書籍『エセ著作権事件簿』(パブリブ)より一部抜粋・再構成しています。

日本の歴史上、史上最も大規模かつ理不尽な「エセ著作権騒動」かもしれない。それが、2020年東京五輪の大会エンブレム(上図右)へのパクリ疑惑である。

ベルギーにあるリエージュ劇場という劇場のロゴマーク(上図左)の盗作ではないかという疑惑が寄せられ、デザイナーである佐野研二郎に誹謗中傷が集中。このため、2015年7月のデザイン発表から一か月余りで撤回され、別のデザインが再公募され、差し替えになった……というのが大まかな顛末だ。

この疑惑は、ネットメディアでのバッシングから、マスコミや言論人による批判が追随した炎上騒動の趣きが強かった。

だが、そもそもの疑惑の発端は、当のリエージュ劇場のロゴマークをデザインしたベルギーのデザイナー、オリビエ・ドビその人によるSNS上での告発だった。

当時、日本の多くのメディアや言論人が、彼の告発を無批判に受け止めたが、ハッキリいってどうかしている。誰も、これが非常識な思い込みと言いがかりだと気がつかなかったのだろうか。