女子高生の日帰り「ゆる登山」でまさかの遭難…帰り道が分からなくなった理由を《専門家》が警告

AI要約

登山ブーム再来に伴い、安全な登山のノウハウが求められている。

15歳の主人公を通じて、遭難を避けるための計画や判断の重要性が描かれている。

登山初心者が予定を適切に立てることで無事登山を楽しめることを示唆している。

女子高生の日帰り「ゆる登山」でまさかの遭難…帰り道が分からなくなった理由を《専門家》が警告

アウトドアファッションの流行や、キャンプ・グランピング人気の盛り上がり、フジテレビの「月10枠」では山岳医をテーマにしたドラマ(『マウンテンドクター』2024年7月~)の放送が始まるなど、<登山ブーム再来>と注目が集まっている。

その一方で、毎年のように山では事故や遭難が絶えない。山でのレジャーを楽しむために一番必要なのは、安全に登山するためのノウハウだ。

この記事では、長野県山岳遭難防止アドバイザーで、『ドキュメント 生還』『これで死ぬ』の著者・羽根田治氏が監修をつとめた『6days 遭難者たち』をもとに、「遭難しないためのノウハウ」を解説する。

<日帰り“ゆる登山”で絶対に「やってはいけない」2つの行動…生死を分ける《危険な判断》と《命を救うアイテム》専門家が警告>に引き続き、山を楽しむために知っておきたい対処法を、ぜひ身につけてほしい。(以下より本文)

『6days 遭難者たち』(安田夏菜・講談社)の主人公、坂本美玖は15歳の女子高校生。山好きだった亡き祖父との約束、北アルプスの槍ヶ岳に登るため、山岳部に入部した。

しかし、体力的には秀でていたものの、読図やファーストエイド、気象などに関する知識の習得に嫌気がさして、わずか数ヶ月ほどで退部してしまった。

その際、顧問の教師に嫌味を言われて腹を立てた美玖は、心の中でこう呟いた。「なんで紙の地図とか、読めなきゃならないんですか? スマホの地図アプリで自分のいるところくらい、GPSで出ますよ」

それから間もない夏休み中の8月中旬、登山に興味を持った同級生に請われ、女子高生3人のパーティで日帰り登山に行くことになったのだが……。

2人の同行者に登山経験がまったくないことを考慮し、美玖が選んだのは標高1712メートルの鎌月岳という山だった。

標高的には中級山岳になるが、アプローチにロープウェイが利用できるので、自分の足で登る標高差は800メートルほど。登りに3時間、下りに2時間半を見て、午後3時ごろロープウェイ駅に下りてくる計画を立てた。

近年の遭難事故の多くは、自分たちの体力や技量を過大評価して、実力に見合わない山・コースを登ろうとすることで起きている。美玖の計画も、登山未経験で体力が未知数の2人がいることから、若干無理があるかな、という気がしないでもなかった。

美玖には物足りないかもしれないが、もうちょっと標高差の小さい山、短いコースを設定したほうが、2人にとってはよかったのではないだろうか。また、下山予定時刻が午後3時というのも、登山の原則である「早発早着」からすると、ちょっと遅いように感じた。

もっとも、実際に登ってみると、予定より早くスタートできたこともあって、午前10時前に山頂に到着し、11時過ぎには下山にとりかかれた。

初心者の2人は登りでバテ気味になりはしたが、山頂で早めのランチタイムを楽しんでいるうちに、すっかり回復したようだった。結果的に計画に無理はなく、概ね適正なものだったと思われた。少なくとも山頂までは。