土石流に巻き込まれ鉄骨の部材に挟まれた右脚、医師「切りました」…動けない生活「地獄のようだった」

AI要約

福岡、佐賀、大分の3県で計9人が亡くなった昨年7月の記録的大雨から10日で1年となる。福岡県久留米市田主丸町竹野地区で発生した大規模な土石流に巻き込まれ、右脚切断の重傷を負った男性は、病院を退院後も地区外で暮らしている。「あんな恐怖は二度と味わいたくない」と、土砂災害対策の重要性を訴える。(佐々木道哉)

土石流が襲った千ノ尾川沿いで暮らしていた板金業、石川武さん(75)は昨年7月10日午前9時半頃、自宅近くの作業場にいた。窓から外を見ると、大きな丸太が道路を流れ落ちている。「逃げなければ」と思った瞬間、土石流に巻き込まれた。作業場の建物ごと押し流され、気づくと、トラックと地面の間で、下半身はトタンなど板金の材料に埋まっていた。右脚は鉄骨の部材に挟まれ、全く動かせなかった。

自宅にも土砂が流れ込んだが、妻の千代美さん(68)と長男の治樹さん(44)は、2階に避難して無事だった。

 福岡、佐賀、大分の3県で計9人が亡くなった昨年7月の記録的大雨から10日で1年となる。福岡県久留米市田主丸町竹野地区で発生した大規模な土石流に巻き込まれ、右脚切断の重傷を負った男性は、病院を退院後も地区外で暮らしている。「あんな恐怖は二度と味わいたくない」と、土砂災害対策の重要性を訴える。(佐々木道哉)

 土石流が襲った千ノ尾川沿いで暮らしていた板金業、石川武さん(75)は昨年7月10日午前9時半頃、自宅近くの作業場にいた。窓から外を見ると、大きな丸太が道路を流れ落ちている。「逃げなければ」と思った瞬間、土石流に巻き込まれた。作業場の建物ごと押し流され、気づくと、トラックと地面の間で、下半身はトタンなど板金の材料に埋まっていた。右脚は鉄骨の部材に挟まれ、全く動かせなかった。

 自宅にも土砂が流れ込んだが、妻の千代美さん(68)と長男の治樹さん(44)は、2階に避難して無事だった。

 消防のレスキュー隊に助け出され、病院に運ばれたところまでは覚えているが、その後の記憶はない。目覚めた時には緊急手術が終わっており、右脚はなく、医師から「脚を切りました」と告げられた。ベッドの上で動けない入院生活が続き、「地獄のようだった。つらかった」と振り返る。

 2月に退院し、現在は市営住宅で妻と暮らしながら、義足を使ったリハビリに励む。治樹さんが一人で住む自宅に戻って暮らしたいと考えているが、「強い雨が降るとあの日を思い出す」と、今年の梅雨が明けるまで先送りしている。

 土石流が起きた耳納山地では過去にも土砂災害が繰り返されており、福岡県によると、昨年は千ノ尾川以外でも複数箇所で発生した。土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に立つ住宅も少なくなく、県が砂防ダム建設といった緊急対策を進めている。石川さんは「あの恐怖は忘れられない。対策を急いでほしい」と訴えている。

 昨年7月10日の記録的大雨では福岡、佐賀、大分の3県で線状降水帯が発生。福岡、大分両県の8市町村に大雨特別警報が発表され、佐賀県唐津市などでも土砂災害が発生した。